《釣り》賢いヤマメと駆け引き 大子・八溝川 新緑の森歩く渓流釣り 茨城

茨城新聞
2026年4月29日

茨城県大子町を流れる八溝川。4月1日の解禁当初は久慈川漁協が放流したヤマメの魚影が濃く見られ、訪れた釣り客はたくさんのヤマメを釣り上げ満足して帰ったことだろう。解禁日から2週間たって、ヤマメはどうしているだろうかと、新緑美しい季節の香りを感じながら狙ってみた。

午前6時ごろ八溝川の下流域で餌のピンチョロ虫を取る。勝手知ったる川なので、どこで発生しているかは分かっている。この時期の釣りはピンチョロの取れ具合で決まる、と言っても過言ではない春の特餌だ。

今回の釣果と仕掛け

目の細かい網をひとすくいするだけで餌箱いっぱいのピンチョロを捕獲。そこから上流へ向け釣り上がる。付近には釣り人の足跡がたくさんあって、相当数が釣られてしまっただろう。残る個体は警戒心が強まって釣るのが難しい。

そう、この賢くなったヤマメを釣るのが渓流釣り師の腕の見せどころ、面白みでもあるのだ。雨の後で水量が多い。水際で足首まで踏み込むと7~8メートル離れた流れの中で「シュシュッ」と魚影が散った。

人影が近づくだけで警戒されてしまう。石に化け、木に化けて遠くからさおを伸ばす。針に掛けたピンチョロを流れに届けると「シュンシュン」と隠れ家から出てきたヤマメが餌の周りを行ったり来たり。

春ヤマメの特餌、カゲロウの幼虫ピンチョロ虫

「この餌はわなか。食って大丈夫か。モタモタしていると他のやつ食われてしまうぞ-」なんて考えているのかもしれない。

ヤマメが流れの尻に回り込むと目印が抑え込まれた。「食ったか!」流れの中で銀色が激しく暴れる。ここからが大変だ。さおの長さいっぱいの仕掛けが、張り出した枝に引っかからないよう、水面近くまでさおを寝せ、開けた所まで導くとやっとタモ網の中に収まった。

斑紋美しいヤマメ22センチ。丸い尾びれが特徴の、これはおそらく放流もの。丸いひれが再生して伸び、解禁時より一回り大きい。

ヤマメは1カ所で1匹釣ると、他の魚は警戒して隠れてしまう。次の流れへと新緑の森を歩く。これこそが本来の渓流釣りであり、とても楽しい時間帯だ。

次々と変わる景色の中から、釣れそうな流れを見つけ、気配を悟られぬようさおを伸ばす。一度見切られると次はない。慎重かつ大胆に、ごちそうのピンチョロ虫を見せ、警戒心の芽生えた賢いヤマメとの駆け引き。

何年か前までは大物のヤマメばかり狙って東北の川に遠征していたが、今はこんな釣りが楽しくてたまらない。(奔流倶楽部渓夢・上谷泰久)