「回り舞台」6年ぶり開催 常陸大宮・西塩子地区 10月に歌舞伎 存続へ支援の輪 茨城
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茨城県常陸大宮市西塩子地区に伝わり、現存する日本最古の組み立て式農村歌舞伎舞台「西塩子の回り舞台」の公演が10月25日、6年ぶりに開催される。同地区の全戸でつくる「西塩子の回り舞台保存会」が正式に決定した。
農村歌舞伎は、1945年ごろまで農閑期の田んぼなどに設営された舞台で演じられ、地域の娯楽として住民らに親しまれていた。西塩子地区でも盛んに興じられたが次第に行われなくなり、道具類は地域の倉などに納められていた。91年の大宮町歴史民俗資料館の調査で、組み立て式舞台が江戸時代後期の文政年間のものと判明。保存会が結成された。97年、隣県の歌舞伎伝承者らに指導を仰ぎながら、半世紀ぶりに公演を復活させ、原則3年おきに公演が行われてきた。
前回公演は2019年。その後、新型コロナウイルスの拡大が活動を直撃した。保存会メンバーの高齢化による担い手不足、資金集めなど課題が重くのしかかり、延期が続いた。
しかし、地域文化の伝承の灯は消えなかった。「ふるさとの伝統文化を、なんとかして残さなくては」と、有志の市民らが保存会を支援する会を立ち上げたほか、県内の教員や学生らでつくるNPO法人が支援の輪を広げ、シンポジウム開催などを通して公演再開の機運醸成を図った。保存会は24日に臨時総会を開き、公演の再開を正式決定した。
真竹や木材約500本で組み立てられる舞台は、間口、奥行き20メートル、高さ7メートルで、壮麗なアーチ型屋根が大きな特長。地元の竹林から竹を切り出し、屋根は独特のひもの結び方を駆使して作る。約1カ月かけて完成させ、公演が終われば解体する。歌舞伎は、地元の小学生や保存会メンバーらが練習を重ねて自ら演じる。
保存会の大貫孝夫会長は「高齢化が進み復活へやる気がなかなか見いだせなかったが、多くの方々に後押しされ、歩み出せた。地域の宝を何とか次代に継承していかなければならない」と話す。今回公演を機に、新しい運営方法や公演を継続していく方策を模索する考えだ。