バナナ餌に豚肉 取手で人気、少量生産 地元企業が銘柄開発 茨城
茨城県取手市に「バナナポーク」と呼ばれるブランド豚肉がある。市内の食肉処理・加工販売会社「日本畜産振興」が開発し、餌にバナナを混ぜて育てた豚肉だ。少量生産のため広く出回らないが、地元住民からは評判の味だ。銘柄豚が生まれた背景には社長の安藤貴子さん(60)の「業界のイメージを変えたい」との思いが詰まっている。
バナナポークは2011年に開発された。フィリピン産バナナの果肉を乾燥させて粉状に砕き、飼料に配合して出荷前の約2カ月間与える。さっぱりして臭みがなく、食感の良さと柔らかい肉質が特徴だ。一般の豚肉と比べ、低カロリーでビタミンEやアミノ酸が多く含まれるという。
バナナポークを生産するのは県内外の指定農場3カ所のみ。同社が取り扱う豚肉全体のわずか1%に過ぎない。市内に2カ所ある同社の直売所での限定販売で、発売日には開店前から住民が並ぶ人気ぶりだ。
バナナに目を付けたのは安藤さんの弟だった。飼料用穀物の高騰で生産者から悲鳴が上がり、代わりの飼料を探していたところ、フィリピンで間引きされて捨てられるバナナを知り、餌に取り入れた。当初は味が淡泊など課題もあったが、約5年かけて試行錯誤で取り組んだ。考案者の弟は完成を前に亡くなった。
中学校の体育教師だった安藤さんは当初、父の立ち上げた同社を継ぐつもりはなかった。経理を手伝うようになり、04年に社長に就いた。幼少から食肉処理業には何となく抵抗があった。言葉でうまく表現できないが、「居心地の悪さを感じた」と言う。
バナナポークの飼育は通常と比べて約20日多い約200日間を要する。手間がかかる上、利益も出にくいというが「地元の人に認めてもらい、喜んでほしい」と販売を続ける。食肉処理場の見学も受け入れ、業界の理解を深めてもらう。
商品のトレードマークは3匹の子豚が笑顔でバナナに乗る。「かわいい豚なら子どもたちにも親しんでもらえる」との願いを込め、おいしい肉を食卓に届けようと、日々取り組んでいる。