暮鳥の詩 魅力紹介 大洗で生誕140年・没後100年展 「雲」仮製本など126件 茨城
「おうい雲よ」の詩の一節で知られ、日本の近代詩に大きな足跡を残した詩人、山村暮鳥の生誕140年・没後100年を記念する展覧会「山村暮鳥と大洗~おうい雲よ~」が、茨城県大洗町磯浜町の幕末と明治の博物館で開かれている。晩年を過ごした大洗での活動を中心に、代表詩集「雲」の仮製本、日本画家・小川芋銭による同作の揮毫(きごう)など126件を集め、自然や人間愛を捉えた暮鳥詩の魅力を紹介している。
暮鳥は1884(明治17)年、群馬県棟高村(現高崎市)に生まれた。同県前橋でキリスト教の洗礼を受け、神学校に学んで伝道師となる。秋田、仙台、水戸、磐城平など各地の教会に赴任して伝道活動をしながら詩作を続け、野口雨情や横瀬夜雨ら茨城を代表する文学者とも交流した。1919(大正8)年、結核を患って教会を辞め、晩年の約5年間は大洗町で療養生活を送り、40歳の若さで生涯を終えた。
今回の展示は顕彰団体「暮鳥会」(加倉井東会長)の協力を得て、大洗での創作活動を軸に作品の魅力を多角的に紹介。晩年の地で手がけた詩集「雲」の仮製本をはじめ、交流のあった芋銭による同作の揮毫、暮鳥の長女の玲子が大洗の風景を描いたスケッチなどを集めている。
このうち仮製本は、暮鳥が亡くなった直後、葬儀のために3日間で急造されたと伝えられている。暮鳥会が2012年に県立歴史館所蔵の関係資料を調査した際、一般資料に紛れているのを見つけた。
仮製本の中に入っていた暮鳥による校正指示書きも紹介。編集者宛てに追加で詩1編を挿入する指示が書かれており、「切にたのみます」などと懇願する内容が見られる。
このほか、暮鳥の肖像写真や家族写真、詩集の生原稿、親交のあった有島武郎や室生犀星らの書簡も展示している。
福島県いわき市から訪れた自営業の70代男性は「暮鳥晩年の大洗時代に興味があった。展示内容が多彩で自然を題材に素晴らしい詩を作っていたことが分かった」と話していた。
会期は12月17日まで。水曜休館。同館(電)029(267)2276。