酒造り、ネットで資金 桜川の蔵元

茨城新聞
2016年12月17日

創業230年以上で日本酒「花の井」の蔵元、西岡本店(桜川市真壁町田、西岡勇一郎社長)で、ネットを通じて事業資金を募る「クラウドファンディング(CF)」を活用し、寄付した一般の日本酒愛好家らが酒造り体験を楽しむ取り組みが行われた。参加者は古くから伝わる伝統の仕込みに挑戦。出来上がった酒は2月上旬ごろ、参加者にそれぞれ贈られる予定。

体験は、市内の若手事業者でつくる「桜川本物づくり委員会」が主催。CFのサイト「Readyfor」を通じて行われ、集まった資金で酒米や精米代を補った。CFには42人が寄付。一定額以上の寄付をした人に返礼品の一つとして体験を提供し、出来た酒も贈る。ほかの人には寄付額によって、酒や酒蔵見学のチケットを贈る。

企画した常陸大宮市出身の地域振興会社社員、阿部貴仁さん=東京在住=は「まず酒造りを楽しんでもらうのをきっかけに、桜川に興味を持ってほしい」と狙いを語る。酒蔵では2011年から地元の県立真壁高生が参加して酒造りを行ってきたが、一般客が体験するのは初めてという。

10、11両日、本県や首都圏から集まった25~68歳の参加者計14人が、酒蔵で洗米から仕込みまでを体験。洗米では、専用の機械で2分間洗った桜川市産のコシヒカリを網に移し、ホースの水でさらにすすいだ。

コメを水に漬け、西岡社長が「水を吸うとコメが白くなる」「湿度などの条件によって水の吸い加減が変わってくる」と説明すると、参加者は興味深そうにコメを手に取った。室温30度の「麹(こうじ)室」でコメをもみほぐす作業では、汗をにじませ取り組んでいた。

東京都の会社員、小沢衣里佳さん(25)は「職人と直接関われるのは有意義」と話した。千葉県流山市の藤原信一郎さん(68)は「酒が造られる過程を実体験できる機会だと思い参加した。大変な思いで造られていることが伝わってきた」と満足げだった。

今回仕込んだ酒は「cocoro duke(こころづけ。)」と名付けられ、限定千本を瓶詰めする。CFの支援者に送るほか、イベントなどでも販売するという。阿部さんは「市内に田んぼを借りて酒造りのための田植えや稲刈り体験も今後できれば」と語った。 

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