桐生織りの歴史に触れる 日本遺産 桐生に6件
桐生市の絹遺産などを紹介するイベント「かかあ天下―ぐんまの絹物語―in桐生」が12日、同市本町の「あーとほーる鉾座(ほこざ)」を中心に開かれました。イベントの一環で、市内五つの小学校の6年生12人が「子ども記者」となって取材し、ガイドマップ作りに取り組みました。織物生産を続ける工場などをめぐり、桐生織の歴史や文化について学びました。
日本遺産の「かかあ天下―ぐんまの絹物語―」を構成する文化財は群馬県内に12件あり、このうち6件が桐生市内です。それぞれの文化財を紹介します。
《白瀧神社(桐生市川内町)》
◎岩がシンボル
京都から桐生に織物技術を伝えたといわれる「白瀧姫」をまつる神社です。「機織(はたお)り女」と呼ばれた女性や絹商人が、商売繁盛などを願ったそうです。
神社のシンボルは「降臨石」という大きな岩です。昔は、この岩に耳を当てると機織りの音が聞こえていましたが、不届き者が岩の上に登ってから、その音が聞こえなくなったと伝えられています。
《桐生新町伝統的建造物群保存地区(桐生市本町1・2丁目、天神町1丁目の一部)》
◎織物の中心地
上毛かるたの読み札で「桐生は日本の機(はた)どころ」とあるように、およそ400年前に「桐生新町」というまちができてから、この辺りは織物業の中心地でした。
現在も蔵や町屋、歴史的な建造物が多く見られ、商家や銭湯も残っています。のこぎり屋根工場跡を、古書店やアトリエといった新たな形で利用している人たちもいます。
《桐生織物会館旧館(現・桐生織物記念館)(桐生市永楽町)》
◎洋風の窓や屋根
1934(昭和9)年に建てられた、桐生織物同業組合の事務所跡です。2階の窓にステンドグラス、屋根に日本洋瓦を使っている洋風の外観が目を引きます。
かつては電話を取り次ぐ交換手や、タイプライター事務員など、女性職員が仕事を支えていました。織物資料の展示や、絹製品の販売をしています。
《織物参考館“紫(ゆかり)”(桐生市東)》
◎手織り体験
織物の歴史を今に伝えようと、古い染色技術や織物文化などを紹介する資料約1200点を展示しています。繭から糸を取り、染色から織り上げるまでの一連の流れを学べます。
体験型の“博物館”にもなっていて、はた織り機を使った手織りや、藍染めの染色体験によるハンカチ作りなどができます。
《旧模範工場桐生撚糸合資会社事務所棟(現・絹撚記念館)(桐生市巴町)》
◎石造りの洋館
1917(大正6)年に建てられた石造りの洋館で、織物に加工する前の糸によりをかける「撚糸」の工場の事務所でした。
かつては広大な敷地があり、のこぎり屋根工場にフランス式の機械を備え、日本最大の撚糸工場に成長しました。関東大震災以前の洋風石造建造物は珍しく、県内でも最古級とみられています。
《後藤織物(桐生市東)》
◎今も織物生産
明治時代から「桐生織」の伝統を受け継ぎ、今でも帯地など織物の生産に熟練した女性従業員が携わっています。
住まいと事務所、工場に関わる建物が残っています。現在も、木造ののこぎり屋根工場や蔵(倉庫)、釜場などを使い、染色や撚糸、織りといった生産の仕組みを引き継いでいます。
【写真】桐生織物記念館で機織りを体験。マップ作りの参考にしました