岡倉天心シンポ 「東西融和に尽力」強調
西洋化の荒波が押し寄せた明治期に、美術行政家・思想家として日本美術の発展に貢献し、米国やインドを舞台に活躍したほか、文化を仲立ちに東西の融和を目指した岡倉天心(本名・覚三)。その人物像に迫る「茨城大学国際岡倉天心シンポジウム2016」(茨城新聞社など共催)が3日、水戸市内のホテルで開かれた。日米の研究者らが専門の立場で議論を繰り広げた。
パネル討論には、米ボストン美術館日本美術課長のアン・ニシムラ・モース氏、米マサチューセッツ州立大準教授のビクトリア・ウェストン氏、インド出身の僧侶で日本ベーダーンタ協会長のスワーミー・メーダサーナンダ氏、茨城大教授の小泉晋弥氏、同大準教授の清水恵美子氏の5人が登壇。
天心が国際的に活躍できた要因を、モース氏とウェストン氏は研究成果を踏まえ「異文化の人を理解する能力に長けていた」「複数の物事をまとめ上げて提示できる人」と指摘。スワーミー氏は「政治や経済では(国・地域を)一つにすることはできないが、文化ではそれができる。天心はそれを行った人」と称賛した。
小泉氏は「文化の異なる国に行ったとき、状況を見極めながら相手方の懐に飛び込める人だったのでは」と思いを巡らせた。
清水氏は「天心は幼い頃から英語を学んだり、外国人と接するなど、多様な文化を受け入れる環境にあった」と話し、「対立する人々、世界をまとめられるのは文化・芸術の力。天心はその力を信じ、東洋と西洋の融和に力を注いだ」と強調した。
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