高品質、高価値ブドウ 笠間の深谷さん親子が栽培

茨城新聞
2015年9月30日

最高で、1房1万円で販売されるほど価値の高いブドウを作っている果樹園が笠間市にある。深谷一郎さん(60)と長男の聡さん(33)が、手間暇かけて栽培。今年も大粒で形が整い、味も一流の〝傑作〟に育て上げた。贈答用として人気で、直売のほか、都内の百貨店などで扱われ、フランス大使へのプレゼントにされたこともある。

8月ごろから収穫が始まり、ブドウの旬真っただ中。巨峰をはじめ、皮ごと食べられ糖度の高いシャインマスカット、12月ごろまで収穫可能でクリスマス用にも引き合いがあるウインクなどの欧州系ブドウなど約30種を栽培する。
一郎さんの祖母の代から続く深谷果樹園で、高価値のブドウ生産に踏み切ったのは13年前。「多く流通する大産地のものに対抗しようと、手間をかけて質と価値を上げる方法に挑戦した」(一郎さん)。聡さんが県立農業大学校を卒業し、家業を継ぐ決意を固めたのが契機となった。
2.5ヘクタールあった畑を1ヘクタールまで縮小し、質の向上に集中。リスクを恐れず3年ほど試行錯誤した末、ブドウの評判が口コミで広がるようになった。
時間を要する作業の一つが、一郎さんがこだわる特殊な土作り。カヤなどの植物を発酵させた堆肥を3~5年もかけて完熟させる。ミネラル分の多い魚介類の粉末も混ぜており、「根の張りがとても良くなる」という。
聡さんは大学校で得た栽培知識を持ち込んだ。十分な養分を実に届けるために不要な枝を成長する前に取り除く「枝かき」や、余計な実を摘んで房の形を整え、見た目の価値を高める「摘粒」などの手入れを丹念に行う。
ほかにも、高糖度の実を育てるために最低限の水を与える自動装置を導入するなど、さまざまな先進技術を用いている。
一郎さんが「息子には栽培、手入れの技術はかなわない」と話せば、聡さんは「ブドウ作りの勘もある父は、目標であり大きな存在」。互いに尊敬し、支え合ってきた。
「前年よりも良いブドウを毎年作らなければ、お客は満足しない。これからも手を抜かずに質を追求し、全国のトップブランドを目指したい」(聡さん)。親子の挑戦は始まったばかりだ。

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