茨城弁の魅力、全国に 「ひよっこ」で方言指導

茨城新聞
2017年5月11日

水戸市でシャンソンカフェを営む中澤敦子さん(75)は、高度経済成長期の本県や東京を舞台にしたNHK朝の連続ドラマ小説「ひよっこ」で、登場人物が話す茨城弁の方言指導を担っている。「飾り気がなく、素朴な茨城弁の温かみを全国に知ってもらいたい」。注目の集まるドラマに郷土愛を込め、失われつつある方言の魅力を伝えている。

ドラマは4月から放送がスタート。本県北西部の山あいにある架空の「奥茨城村」で育った主人公たちが集団就職で上京し、成長していく姿を描いている。作中には「んだね」「この、ごじゃっぺが」などのセリフが日常会話として飛び交う。

こうした茨城弁の使い方やイントネーションを出演者に指導しているのが、オーディションで選ばれた中澤さんだ。台本が手元に届くと、登場人物のセリフを茨城弁に訳し、その話し方をテープに吹き込む。出演者たちはそのテープを聴きながら演技に臨む。

「茨城弁は繊細。その時の(登場人物の)気持ちによって、イントネーションが微妙に異なる」。中澤さんは指導の難しさについて、こう説明する。

同じ茨城弁でも、役柄によって言い方を変えている。「(主人公の)みね子ちゃんはかわいらしく、おじいちゃんなら厳格に、お母ちゃんは上品に」。細やかな指導は毎回、撮影現場でも繰り返される。

特に難しいのはなまりの強弱だ。ドラマは全国放送。なまりが強すぎると内容が伝わらない。このため、誰が聞いても分かる言葉にする必要がある。方言の良さと、伝わりやすさとのバランスに気を配りながら、言葉の一つ一つに指導を重ねている。

水戸市泉町でシャンソンカフェ「ルーブル」を営むほか、女優としても活躍する中澤さん。水戸で生まれ育ち、染み付いた茨城弁には苦労してきた。演技中など感情が高まると、言葉の節々になまりが出てしまうことがあったという。

そんな「悩まされた」茨城弁に、今は愛着が増している。「茨城弁っていいねと言われると、やっぱりうれしい」。クランクインした後は、東京と水戸を行き来する暮らしが続く。「放送後に地元へ戻ると、『あそこ(の言い方)は、ああじゃあんめえ』と言われたりする。茨城には多くの指導者がいる」と表情を和らげる。

素朴で飾り気のない茨城弁。ただ、方言は次第に失われつつある。「社交下手と言われる県民性にぴったりの言葉で、魅力を改めて確認している。ドラマを機に、若い人も堂々と使える言葉になるといい」

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