《ぐるっと点検 ぐんま》伝統野菜 地域おこしに一役 知名度アップや生産維持に努力

上毛新聞
2017年2月9日

地域の気候風土に合った野菜として古くから作られてきた伝統野菜が、地産地消や食育、地域振興の観点から再び注目されている。高度経済成長期を経て、大量生産に適さず姿を消したり、生産が大きく減った例が全国的にも見られるが、県内各地の農家が採種を重ねるなどして、さまざまな「地域ブランド」を守る。伝統復活への動きも目立ってきている。

肥よくな土壌
高崎市国府地区の国分ニンジンは大正期に地元農家の改良で生み出され、1950年代まで多くの農家が生産したとされる。色の濃さと甘み、強い香りが特長だが、可食部が60センチにもなる細長い形状が流通面でネックとなり、次第に規模が縮小した。
地元の生産者団体と県、市、JA、民間企業が昨年11月、「高崎国分にんじん振興協議会」を設立。加工、流通などに一体的に取り組み、生産農家3戸、栽培面積が65アールまで落ち込んだ現状の打破を目指している。
JAはぐくみによると、国府地区は榛名山の噴火による火山灰で肥よくな土壌が形成され、冷たく乾いた季節風も相まって昭和初期から、ハクサイ栽培も本格化。甘く歯切れのいい仕上がりになるとして、地域で作られたハクサイの総称が「国府白菜」となった。

高校生が栽培
JA甘楽富岡によると、甘楽富岡地域の下仁田ネギの栽培面積は約100ヘクタール、直接販売や直売所への持ち込みを除いた市場出荷は約270トン。県内外での知名度は高いが、担当者は「高齢化で生産は減少傾向にある」と説明する。
太田市の尾島ネギや沼田市の沼須ネギなど地名を冠したネギが各地にある。軟らかさと味のよさが人気だが、自家栽培が主流で市場に出回る機会は少ない。石倉ネギ(前橋市)のように種苗会社が種を販売する例もある。
伊勢崎興陽高は1997年から地元農家の協力を得て、下仁田ネギと同様に太さが持ち味の下植木ネギ(伊勢崎市)を栽培。新たな加工や食べ方を考案中の植物科学研究部の2年生コンビ、石井実可子さんと小暮千咲さんは「知名度を高めたい」と意気込む。
大型の高山キュウリ(高山村)や奥多野地域の「あかじゃが」など、中山間部には多様な伝統野菜が残る。「親から受け継ぎ、仲間にも分けてもらっているから続けられる」。美しいつやの豆をあんにしたり、さやも食に適したネコマナコ(ネコノメインゲン)を栽培する星野長太郎さん(67)=みどり市東町花輪=は、農作物を通じた地域交流を今後も大切にするつもりだ。

 

◎冊子で取り組み応援
県スローフード協会発行の冊子「ぐんまの伝統作物―食卓で語り・引き継ぐ」(2011年3月)は、古くから栽培されて採種が繰り返されるなど、地域と深く関わるさまざまな品種を紹介している。
冊子はA4判56ページで、西北毛で栽培が盛んなコンニャクイモや、太田市尾島地区特産のヤマトイモなども写真入りで取り上げた。高崎市倉渕町の陣田ミョウガの甘酢漬けといった伝統食も掲載。同協会は「生産者が減りつつある中、各地の取り組みを応援したい」として、冊子の改訂を検討している。

【写真】上:国分ニンジン、中:下植木ネギ、下:ネコマナコ

【図表】県内の主な伝統野菜

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