仏像制作は平安時代 石岡・横室神社の「不動明王」

茨城新聞
2016年6月10日

石岡市八郷地区の神社にある市指定文化財の仏像の制作時期が、当初考えられていた室町時代から平安時代にさかのぼる可能性が高いことが、9日までに分かった。建築に詳しい氏子らが、考古学の年代測定などで実績のある加速器分析研究所(川崎市)に放射性炭素測定を依頼。測定結果で「1034~1170年」の可能性が94%という科学的根拠を得た。氏子らは「貴重な仏像」と喜んでいる。

仏像は、同市柿岡の横室神社の「不動明王」。寄せ木造りで像高49センチ。指や剣、光背が一部欠損しているが、表情は右目を開き、左目を細く閉じる「天地眼」を表し、天下太平を祈願する。材料の木曽ヒノキが関東地方になかったため、もともと関西方面で造られたとも伝えられている。

神社は郵便局と駐車場に挟まれ、鳥居と社殿がある小さな神社。老朽化が進んでいたため、一昨年に地元住民の氏子らで建設委員会を組織して社殿やほこらを建て替えた。引き続き、仏像修復に取り組む中で、詳しい制作年代が話題に上っていた。

これまでの調査で、不動明王の制作時期は室町時代後期か、または同時代を下らない、と推測されていた。市文化振興課によると、合併前の八郷町教委が発行した「八郷町の地名」の中には、同神社は、小田氏一族が地元で名乗った上曽氏が1602年、秋田に佐竹氏とともに移封された際、一族で地元に帰農して神位を祭ったものとされる。仏像(不動明王)は近くで廃寺となった「長楽院から神社に移したものと考えられる」と記されている。

氏子は4月に不動明王の年代検査を依頼。同研究所が、提供された木片などの炭素状態を調べたところ年代を推定。結果は5月23日に氏子に届いた。

氏子総代の早川富雄さん(70)は「(測定結果に)びっくりした。まさかそんなに古い時代とは思わなかった。貴重な仏像だと知り、改めて愛着が湧く」と話した。神社と仏像は地域にとって「お不動さま」と呼ばれるなじみの場所で、氏子関係者は今後も大事に祭っていきたいとしている。

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