菌類の仲間題材に小説 茨城県舞台 笠間・吉武さん 「地衣類知って」

茨城新聞
2025年4月28日

長年研究を続ける菌類の仲間、地衣類を多くの人に知ってもらおうと、かさま環境を考える会会長の吉武和治郎さん(82)=茨城県笠間市=が、推理小説「ジオガイド刑事の捜査日誌 獣道を歩く者達 筑波山遭難者事件」を自費出版した。ジオガイドを目指す刑事が若い相棒に、筑波山をはじめ県内の植物や動物、地質を説明していく。事件解決の鍵を握るのは地衣類という内容。吉武さんは「地衣類を知るきっかけになってもらい、興味を持ってもらえればうれしい」と話している。

地衣類は菌類と藻類が共生しているのが特徴で、身近な所で見られる。地衣類の研究のため福岡から茨城県の大学に進んだ吉武さんは、高校の教員となった後も時間を見つけ地衣類の研究に取り組んできた。

執筆のきっかけは7年ほど前の夢。「茨城を舞台に推理小説を書きなさい」と言う声を聞いた。調査報告書などを書いてきたが、「小説の方が地衣類を知ってもらえる」と思い、ペンを執った。約2年前には常陸昇の筆名で1作目となる「ジオガイド刑事の捜査日誌 愛宕山死体遺棄事件」を自費出版。笠間を舞台とし独居老人を狙う詐欺師の仕事や抗争を描き、ウメノキゴケという地衣類が登場した。仲間を中心に好評で、用意した100冊は手元に残っていない。

2作目となる本書は、構想に約4年かけた自信作。自身が水郷筑波国定公園管理員をしていた経験を踏まえ、自然環境の悪化や生物の種の減少、山林の荒廃と人との関係などを題材とした。物語は筑波山の林道に車が放置され、獣道のそばで死体が見つかるところから展開する。殺害されたのは管理員で、犯人の解明に地衣類のイワタケが鍵を握る。

「言葉の使い方が難しい」という吉武さんは、知人や教え子らの意見を聞きながら何度も書き換えた。

1、2作とも社会課題を盛り込んできたこともあり、次回作に向けても「地衣類が鍵となることは変わらず、背景には人間関係や政治状況などを入れる」と意欲を示している。

B6判。295ページ。1500円(郵送の場合は2000円)。問い合わせは吉武さん(電)090(1819)1653、ファクス0296(77)5056へ。