《戦後79年》戦時下の紙芝居初公開 茨城・日立で企画展 実物資料23点

茨城新聞
2024年6月18日

太 平洋戦争末期の日立空襲から79年を迎える中、茨城県日立市宮田町の市郷土博物館でギャラリー展「戦時下資料の新収蔵展」が開かれている。戦意高揚の宣伝のために製作された「国策紙芝居」など、近年収集して初公開する実物資料23点が並ぶ。7月28日まで。

国策紙芝居のタイトルは「銃後の華」。日本教育紙芝居協会による初期の作品で、1938年に発行された。全国調査でこれまで所在が判明していなかった貴重な資料という。

内容は軍需工場で働く女子工員が、失明した傷痍(しょうい)軍人と結婚する美談。紙芝居の持ち主は旧日高村助役で、昨年家族から寄贈された。会場には「国民精神総動員」と書かれた緞帳(どんちょう)の絵から始まる作品の複写を展示している。

ほかに、戦死した陸軍大尉が出征時に自宅に残した指揮刀や、部隊出動の記念に作られた写真帳も。共楽館(現日立武道館)で開かれた日立鉱山吹奏楽団による慰安会の様子など写真12点も並ぶ。

軍需工場が多くあった同市は米軍の標的となり、45年6月から7月にかけて1トン爆弾の投下や艦砲射撃などを受け、終戦までに約1500人の犠牲者が出た。同館の萩原明子さんは「あの時代の資料が何を伝えようとしているのか、考えたり読み解いたりしてもらえれば」と話す。