幻の米活用 挑戦結実 潮来の愛友酒造、品評会優勝

茨城新聞
2016年8月15日

出品数最多の市販の日本酒品評会「第5回サケ コンペティション」が先月29日、東京都内で開かれ、純米大吟醸部門で潮来市辻の蔵元「愛友酒造」の「愛友 純米大吟醸」が優勝した。社長、杜氏(とうじ)ともに交代して間もない新体制での挑戦ながら、全国に名だたる有名銘柄など358点を押しのけての栄冠。試行錯誤しながらも一貫して「お客さまにおいしく飲んでもらいたい」という兼平理香子社長(52)と杜氏、社員たちの思いが“日本一の酒”に結実した。

兼平社長は、1804年創業の蔵元に生まれた3姉妹の長女。6代目の父、尚武さんは39歳で急逝し、母の紀子さん(76)が後を継いだ。それから約40年後の昨年末、兼平社長が8代目に就任した。蔵元の娘ではあるが、本格的に日本酒の世界に足を踏み入れたのはほんの数年前。現在の杜氏も、岩手県から来るようになって3年目。長い歴史のある蔵元とはいえ、新たな一歩を踏みだしたばかりだった。

伝統を大切に受け継ぎながらも新たな歴史を築こうと意欲をかき立てる兼平社長の脳裏をよぎったのは、幻の酒米「雄町」。150年以上も前に発見された日本最古の交雑のない原生種で、「学生時代に『良い米だが今はない』と聞き、ずっと頭にあった。調べると米作りが復活していたことを知った」と兼平社長。すぐさま杜氏の多田一郎さん(66)に相談したが「雄町は柔らかくて崩れやすい。うちで使うのは厳しい」と首を横に振るばかり。

雄町は山田錦などの優秀な米に比べて“劣等生”と言われるほど扱いづらい酒米。だが、雄町の酒愛好者が「オマチスト」を名乗るほど、その味は深く、しっかりとしたこくがある。

諦めきれない兼平社長は、その思いを多田さんに何度もぶつけた。多田さんも根負けする形でその情熱に応えた。高リスクだが未知なる可能性を秘めた酒米での挑戦だった。兼平社長の情熱と杜氏のこれまでの経験を生かして成功させた。

受賞に「『まさか』とびっくりした」と兼平社長。「一生懸命頑張れば、うちのような小さな会社でも選んでもらえる。杜氏や社員たちに感謝の思い」と続けた。今年5月には、極早生(わせ)品種の地元産米「一番星」を使った酒を造るなど、さまざまな挑戦を続ける。「この受賞は一つの道しるべをいただいた気持ち。もっと勉強して、丁寧に酒造りをしていきたい」と語った。 

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