近藤芳正さん一人芝居 水戸で1月 「あがく姿、味わって」

茨城新聞
2021年12月12日

 ■父、母、息子、演じ分け

人気俳優・近藤芳正さん(60)による舞台「近藤芳正Solo Work『ナイフ』」が、来年1月21~23日、水戸芸術館(水戸市五軒町)ACM劇場で上演される。同作品は、近藤さんが全ての登場人物を演じ分ける一人芝居で、作家・重松清さんの同名小説が原作。当初は昨年6月の上演予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で1度延期され、約1年半を経て、ようやく実現する。公演を控える近藤さんに意気込みなどを聞いた。

-作品について。
「家族の再生の話。登場人物が、ある挑戦をして、挑戦の前と後で見える景色が違ってくる。自分は、そういう話が好きだ」

-1人で何役演じるのか。
「父、母、息子。3役を演じる。もしかすると、もう1役増えるかも」

-なぜ一人芝居を。
「最初は1人で芝居するつもりではなかった。脚本・演出を担当する山田佳奈さんに相談したら、『近藤さん1人でいけるんじゃないですか』と言われ、フィジカルコーチの大石めぐみさんを紹介してもらい、ゲームのように『どう体を変えていくか』というワークショップをやった」

-やり方は。
「(地面に)線を引いて、ここにいる間はお父さん。(線の)こっちに行ったらお母さん。こっちに行ったら息子という感じで、体の動きなどで父、母、息子に一瞬で見えるようになるやり方があることに気付いた。『これならいけるかも』と、実現に至った」

-演じ分けは。
「女性は悩みや考え事などのときに、けっこう首を動かす。男性は不安などがあってもドーンとしている。子どもは思春期の『いらだち』があったりして、足の動きが定まっていなかったりする。足の動きだけでも、母だったら足を閉じていたり、横にしていたりとか。そういう動きで、衣装を替えなくてもポンポンポンと変わっていける」

-1年半前の延期後は。
「コロナ禍では、演劇を見に来てくれる人を少しでも増やしたいと思った。そのために、どうしたらいいかと考える良い機会になった。そんな中で今回、しばらくぶりに舞台に立たせてもらう。器用な役者ではないので、1人で演じ、おそらく『あがく』と思う。それが、見終わった皆さんの勇気でもいいし、癒やしでもいいし、『何か』を味わうことにつながれば、演者としてありがたいと思う」

-水戸での公演について。
「60歳になった男が、何かにあがいている姿を、水戸の街で演じることができるということは幸せなこと。水戸芸術館ACM劇場の客席との距離感、一体感は、なかなかない。演じられるぜいたくさを感じる。水戸の皆さんは温かく見守ってくれるので視線が怖くない。自分の味方で見てくれている感じが、すごくある。ここでの芝居は本当に自分の力になる。水戸の人たちと交流を深めることで、元気になれる。また来ることができて幸せに思う。ぜひ応援してほしい。自分も水戸を応援する」

「近藤芳正Solo Work『ナイフ』」は2022年1月21~23日、水戸市五軒町の水戸芸術館コンサートホールATMで上演。開演は21日が午後6時半、22日は午後2時と同6時半の2回、23日は午後2時。チケットは全席指定でS席4千円、A席3500円、B席3千円。チケット予約センター(電)029(225)3555。

■こんどう・よしまさ
愛知県出身。東京サンシャインボーイズに欠かせぬ客演俳優として脚光を浴び、現在はテレビ、映画、舞台で活躍中。あらゆる役に深く踏み込む演技力と表現力に定評がある。2009年にソロ活動を始動。そのほか舞台制作やプロデュース作品も手掛け、作・演出にも関わっている。水戸芸術館には客演、招へい公演などで何度も来ている。

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