疫病退散の神「牛頭天王」の宝発見 那珂・素鵞神社 22日からパネル展も

茨城新聞
2020年7月21日

那珂市瓜連の素鵞(そが)神社(西野則史宮司)は、疫病退散で信仰を集めた「牛頭(ごず)天王」にまつわる宝物を発見したと明らかにした。牛頭天王は神道で「素戔嗚尊(すさのおのみこと)」と、仏教では「薬師如来」と習合したとされ、同神社では牛頭天王像と面、軸装の素戔嗚尊像、薬師如来立像などを確認。3者の宝物がそろって見つかるのは珍しいという。同神社は「コロナ禍の中、宝物を確認できたことは意義深い」としている。

午頭天王は祇園精舎の守護神ともいわれる。平安時代には災いや疫病を払う神として、現在の八坂神社(京都)に鎮座して祇園信仰の神とされた。

素鵞神社は東日本大震災で拝殿や本殿など被災した。修復のため宝物を整理する中、1725(享保10)年制の牛頭天王像を発見した。牛の頭を頂き、法被姿で、右手には糸状のものを持つ。面は制作年不詳だが、水戸藩士・加藤寛斎の随筆にも記録されている宝物。掲げて疫病退散を祈願したという。

軸装の素戔嗚尊像は、版木も発見されている。「素鵞神社」と記されており、「天保時代のものではないか」(同神社)と見ている。薬師如来立像は西野宮司の自宅に保管されていた。制作年不詳。

同市歴史民俗資料館の仲田昭一館長は「3者そろって目にすることは貴重。よく保存されていた。信仰の姿が表に現れてきたことは大変珍しい」と話す。

同神社では宝物を調査整理しており、今後、一般公開も考えているという。

同神社は806(大同元)年創建。1560(永禄3)年に佐竹氏の18代義昭が修営したと記された棟札が残る。祭神の素戔嗚尊と牛頭天王が神仏習合し、江戸時代後期まで「牛頭天皇宮」と称した。明治維新後の神仏分離策以前、1837(天保8)年ごろから素鵞神社の社名を用いていた。

22~24日には、同市古徳の那珂総合センターらぽーる1階ホールで、同神社が資料提供したパネル展「牛頭天王信仰と祇園祭 新型コロナ禍沈静化の願いを込めて」が開かれる。水戸・歴史に学ぶ会(斎藤郁子代表)主催。県内の素鵞神社や水戸城下での信仰など、全10枚のパネルで紹介する。同神社で発見した宝物の写真も掲載する。

西野宮司は「医学や感染症学といった科学的対応とは別に心の問題はある。祈る気持ちも心のありようとして大事。思いいたしてもらえれば」と話した。

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