ドラマ「ひよっこ」聖地 脚光再び 高萩・中戸川地区 住民団結「おもてなし」 茨城
茨城県が舞台のNHK連続テレビ小説「ひよっこ」のロケ地の一つとなった同県高萩市中戸川地区が再び脚光を浴びている。朝ドラ放送から7年の間にはコロナ禍で来訪者が減少したものの、地域住民が当時の熱気を取り戻そうと団結。多彩な「おもてなし」を展開しており、「聖地巡礼」のファンが戻りつつある。
ひよっこは県北西部の架空の村「奥茨城村」で生まれ育った主人公、谷田部みね子が集団就職で上京し、成長していく姿を描いた物語。
中戸川地区には「バス待合所」が設置され、みね子や同級生が通学や上京時に利用するなど印象的なシーンが数多く撮影された。同地区住民で撮影に協力した菊地豊さん(63)は「ここで撮影するのかと驚いた」と当時を振り返る。
2017年4月に朝ドラ放送が始まると、1日当たり約50人のファンが訪れるようになった。地元住民は反響を喜び、ファンに喜んでもらおうとバス待合所近くに花を植えたり、ロケ地を紹介する看板を設置したりした。ファンがドラマの感想などを書き込めるノートも置いた。
だが、20年に新型コロナウイルスが世界的に流行。放送終了から時間が経過したこともあり、来訪者は次第に減少した。
地元住民19人は22年ごろから、再びファンに訪れてもらおうと、さまざまな企画を展開。バス待合所の向かいに「奥茨城村 ようこそ ひよっこの里」と書いた手作り看板を設置したほか、見晴らし台も整備して緑豊かな集落を一望できるようにした。
バス待合所から約250メートル離れた民家で、菊地力雄さん(70)が開設したコミュニティー広場「いこいの場」では、ファンと地元住民がドラマの思い出話などに花を咲かせる。今年3月には約100体のひな人形を広場に飾り付け、ファンをもてなした。
住民の取り組みは次第に浸透し、今年のゴールデンウイークには1日100人近くのファンが訪れる日もあった。現在は大小のこいのぼり約1300匹がファンを出迎える。
同地区を4月下旬に訪れ、バス待合所などを写真に収めた同県日立市の茅根泰子さん(77)は「こいのぼりが新緑に映える。ファンも喜ぶと思う」と話した。
おもてなし企画を通した活性化で住民同士の対話も増え、地域の絆がさらに深まる同地区。力雄さんは「今後も企画を考え、あの頃のように多くの人を呼び込みたい」と意欲を見せる。