「石倉ネギ」の火を消すな 道祖神祭りで試食会「柔らかくて甘い」 復活させた角田さん「保存を」

上毛新聞
2024年1月21日

群馬県前橋市の石倉町上石倉自治会(沢野尚人会長)は、毎年恒例の道祖神祭りに合わせ、同所の公園で地元の小中学生が植え付けた伝統野菜「石倉根深葱(ねぶかねぎ)」(石倉ネギ)の試食会を開いた。石倉ネギは昭和初期に地元農家が改良した品種だが、種を管理する組合の解散により消滅の危機に直面。地元出身で元カネコ種苗社員の角田勉さん(77)が2018年に復活させた。参加した住民は伝統のネギのうま味を堪能した。

同地区はネギ産地だったが、ふぞろいだったために沢野丑太郎(1889~1973年)が種の改良に取り組み、31(昭和6)年に石倉ネギを完成させた。33年には周辺農家が石倉葱採種組合を組織。石倉ネギの名は広く知られるようになったが、高齢化や宅地化が進み、93年に組合が解散。種子が組織的に管理されなくなったため、石倉ネギ本来の味わいが失われたとされる。

状況を危惧した石倉町出身の角田さんが、カネコ種苗でネギの品種改良を担当していた経験を生かして再生に挑戦。文献などに当たって本来のネギに近い種を選抜して2018年、食味や柔らかさ、葉の色合いなどを近付けたネギを完成させた。

昨年8月、同町で環境学習に取り組む小中学生約20人が、角田さんから石倉ネギの歴史や栽培方法などを学び、植え付けを体験した。協力者が育てたネギが収穫され、14日の道祖神祭りで住民に提供された。

ネギは会場で焼かれ、みそを付けて味わった。元総社小4年の古郡佑真君(10)は「柔らかくて甘い。自分で植えて収穫したので余計においしい」と笑顔で話した。角田さんは「石倉ネギは地域の文化遺産でもある。種は希望者に配布しているが、公的機関に保存してほしい」と話している。