県立歴史館 水戸藩ゆかり 絵や書 画人、文人ら77作品紹介

茨城新聞
2016年6月23日

水戸藩ゆかりの御用絵師や文人、画人らの作品を紹介する企画展「水府美術譚-水戸市立博物館所蔵品より-」が水戸市緑町2丁目の県立歴史館で開かれている。耐震工事のため2018年3月まで閉館している市立博物館が、意欲的に収集してきた掛け軸を中心に計77点を展示。花鳥画や故事を題材にした中国由来の絵や書などを、画人たちの活躍を振り返りながら鑑賞できる。会期は7月31日まで。

約250年続いた江戸時代の絵画制作の特徴や水戸藩の絵師の画業を知ることができる。まず江戸時代を通じて藩の御用絵師として活躍した狩野派を紹介。作品は現存数が少なく、貴重な展示となっている。

中国の亡命僧、東皐心越(とうこうしんえつ)にも光を当てた。ボタンの花や布袋を描いた墨画は品格漂う画風を伝える。心越は日本に篆刻(てんこく)や七弦琴の奏法を伝え、水戸藩の学芸の基盤を築いたといわれる。

江戸時代後半は画人の交流が盛んになり、中国史記を参考にした「大日本史」の編さんや、鎖国下で高まった中国の文人文化への憧れが制作活動の質を高めた。藩士で南画家の立原(たちはら)杏(きょう)所(しょ)の山水図や花鳥画、9代藩主斉昭の肖像画や弘道館の小ふすま絵などを描いた萩谷(はぎのや)遷(せん)喬(きょう)の作品を中心に取り上げた。町人出身の桜井雪館(せっかん)や林十江(じっこう)は、野菜売りなど町人の視点から風俗を見つめた作品も並ぶ。

各作品の解説には、同館の研究員による機知に富んだ一文が添えられている。来館者の川上正義さん(62)は「絵の話がすっと分かっていい」と楽しみながら鑑賞していた。

首席研究員の藤和博さんは「作品が数点しか残っていない絵師もおり、地元で守り伝えていかなければ忘れ去られてしまう。画人の絵と名前を覚えてもらえるといい」と話した。

会期中、一部作品を入れ替える。前期58点のうち約20点が7月10日まで、後期の12日から新たに約20点が公開予定。

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