住民の力、夏祭り復活 常陸太田・天神林、60年ぶり

茨城新聞
2015年9月4日

常陸太田市天神林町の夏祭りが60年ぶりに復活した。戦国大名の佐竹氏発祥の地として知られる同町で、「昔の輝きを取り戻そう」と地元住民らが立ち上がった。当時の祭りを現代風にアレンジし、新たに「佐竹の郷ふれあい 一万燈まつり」として生まれ変わった。地域が一つになった祭りの復活で、町内は笑顔とにぎわいであふれた。

祭りを復活させたのは天神林町会をはじめ、天神ばやし保存会、佐竹寺総代会など同町内の8団体でつくる「佐竹の郷輝きプロジェクト委員会」。常陸国を支配した佐竹氏の歴史に思いをはせるとともに、元気な地域づくりを目指そうと住民らが声を上げた。会長を務める土田惣一町会長は「若者には町の魅力を見直して住んでもらい、中高年には生きがいを持って暮らしてもらう。そんな願いを込めて企画した」と力を込める。
祭り本番の8月29日。会場となった同町内の天神林町集落センター周辺には、子どもからお年寄りまで大勢の市民らが集まり、交流を深めた。紙芝居や水ヨーヨーなど親子で楽しめる催しのほか、懐かしい市民体育祭の映像鑑賞、炊き出しコーナーなどが設けられ〝往年のにぎわい〟を見せた。
祭りの復活に花を添えたのが、住民らが一つ一つ心を込めて手作りした約2000個の竹灯籠だ。同センターから国指定重要文化財の佐竹寺の参道にかけてずらりと並べられ、夕暮れとともに火がともされた。辺りは幻想的な雰囲気に包まれ、「きれい」「すてき」などと歓声が上がった。
「家族が健康でありますように」「世界平和」「勉強と部活が両立できますように」。ろうそくのともしびは竹灯籠の中に書き込まれた地元の180世帯の夢や願いを優しく照らし出した。
ステージ上では住民らが歌や踊りを披露したり、同地区に代々受け継がれてきた伝統芸能「天神ばやし太鼓」が演奏されるなど、夜まで祭りムード一色。「元気で華やぐ天神林の姿を共有して、町民の心と町の良さを感じてもらえれば」と土田町会長。笑顔を浮かべる住民らを見詰めながら、祭りが来年、再来年、そして次世代へと長く続いていくことを願った。

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