1年7カ月ぶり企画展、大観の名品など展示 茨城県五浦美術館、24日に全面再開
空調設備工事のため休館していた茨城県北茨城市大津町の県天心記念五浦美術館が24日、全面再開する。約1年7カ月ぶりとなる企画展として、歴代の天心記念茨城賞受賞作と横山大観の名品などを展示する「現代院展のあゆみ」を実施。併せて、休館中の研究成果を踏まえた特別展示「横山大観が愛した五浦」を開催する。24、25日の2日間は再開記念で入館無料となる。
同館は空調設備の不具合が発生し、2019年9月以降の企画展を中止。常設展など一部は開いていたが、昨年8月から工事のため全面休館を続けていた。
再開第1弾となる企画展「現代院展のあゆみ」は、岡倉天心にゆかりがある院展で、県が提供している天心記念茨城賞の受賞作品のうち25作品とともに、大観や平山郁夫さんの名品を展示する。松尾敦子主任学芸員は「日本画の最前線を味わってもらいながら、より重層的に見てもらうために、院展の歴史も知ってほしい」と見どころを説明する。
展示作品は計38点。同賞受賞作のうち、18年の谷善徳さんの「鴻雁北(こうがんきたす)」は金箔(きんぱく)を効果的に使った作品。19年の木下千春さんの「渦巻く」はイワシの回遊を混沌(こんとん)とした現代社会に見立てながら、伝統的な技法を駆使した作品だ。
大観の「山に因む十題 霊峰四趣(れいほうよんしゅ)・其の一」は富士山に松とヤマザクラを配置した名品。小泉淳一館長は「大観が描いた富士山の中でも代表作。最も華やかな作品だ。ぜひ見てほしい」と語る。
期間中の5月15日には同館講座室で、同賞受賞者で日本美術院同人の倉島重友さんによる講演会「天心記念茨城賞受賞を語る」も開かれる。
新型コロナウイルス対応の入場制限は基本的に行われないが、1時間当たり100人を超した場合、制限される可能性がある。
■直筆手紙など/特別展も開催
企画展に合わせ、休館中に進めた研究を踏まえ、特別展示「横山大観が愛した五浦」が同時開催される。大観と家族ぐるみで親交があった旧大津町(現北茨城市)の小野金次の自宅に残されていた大観直筆の手紙などを公開する。
小野家には、大正時代から太平洋戦争中まで約20年に及ぶ大観や妻・静子からの書簡約120通が保管されており、同館が小泉晋弥茨城大名誉教授の協力を得て、研究を続けてきた。大観と同町との関わりなどが記され、塩田釈雄学芸員は「大観の五浦での暮らしぶりが見えてきた」と力を込める。
今回は大観直筆の書簡2通や大観が小野金次に直接贈った作品を含め、計20点を展示。このうち14点は初めての公開となる。会場では小野金次の孫のインタビュー映像も流される。
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