仕込みに手間 うまみ抽出 【県南グルメ 今夜のごちそう】(86)旬彩にぎり かしわずし(栃木)

下野新聞
2020年3月17日

 「魚はミルク。すしはチーズ」。尊敬する先輩職人のこの言葉が、店主・柏倉裕司(かしわぐらひろし)さん(49)の目指すべき道を決定づける契機となった。

 海なし県の栃木。鮮度で漁港町と勝負するのは限界がある。でも、海がないことを言い訳にしたくはなかった。魚をただ切ってシャリに乗せるのではなく、手間暇をかけて仕込む。「ミルクを加工してチーズにするように、手を加えることでうまみ成分が抽出され、よりおいしくなるはず」と明かす。

 1番人気という「旬彩にぎり」(税別2880円)は、にぎり11貫と巻物1本、あら汁、小鉢二つが付く。食材は豊洲市場から仕入れる。ホタテは低温調理をすることで、うまみを出しつつ、食感を残すことを心がけた。サヨリはアン肝のソースが添えられることで、濃厚な味わい。カキはふきみそが詰められ、香りも楽しめる。

 ただし、現状に満足している訳ではない。今でも都内の高級すし店に月1回通い、先輩職人から手ほどきを受けている。その理由を尋ねると、柏倉さんは人なつっこい笑顔を見せた。「すしを進化させたい。東京に負けない本物を追求し、30年後も地域に求められる店でありたい」

 【メモ】栃木市大平町西野田655の8。午前11時半~午後2時。午後5時~同9時半。火曜定休。月1回水曜休み。(問)0282・43・3744。

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