地元特攻隊員の資料展示 常陸太田市郷土資料館 写真や出撃前の体験談

常陸太田市郷土資料館の企画展「戦後80年~語り継ぐ常陸太田の8月15日~」(同市教育委員会主催)が、茨城県常陸太田市西二町の同資料館で開かれている。同市出身の特攻隊員の写真や遺品、千人針や慰問袋など、同市における戦争の記憶を後世へとつないでいくために、当時の資料や体験談などを紹介している。同資料館が戦争関係の資料をまとめて展示するのは初めて。
同市町屋町出身の森辰四郎軍曹は、茨城県最初の陸軍特別攻撃隊員。1944年12月15日にフィリピンで戦死した内容を示す当時の新聞記事なども掲示している。出撃前に国民学校時代の恩師を訪ねたが会うことがかなわなかった。家族が庭先のトマトをもぎ取って渡すと「先生がお作りになった物を頂けるとは思わなかった。おそらく生きて先生にお目にかかれる日はないでしょう。形見に腹の中に入れてまいります」と笑いながら平らげたという。
同市田渡町出身の鈴木典信中尉は谷田部海軍航空隊(現同県つくば市)に勤務していた45年4月に鹿児島県の鹿屋航空基地に移動。神風特別攻撃隊第一昭和隊の隊長として出撃した。鈴木さんの親族が、遺書や家族宛ての手紙を保管していたが、2019年の台風19号の被害で自宅が浸水。「再び被害に遭わないように」と鹿屋航空基地史料館に寄贈し、今回は画像を借りて展示している。
同市遺族連合会が所蔵する戦没者遺影アルバム「おもかげ」や、銃痕がある飯ごう(ぺリリュー島遺品)、木製部は朽ち果てて鉄製部のみ残っている三八式歩兵銃(同遺品)、歩兵第二連隊軍旗(複製)などを展示している。
2階会議室では昭和10~20年代の常陸太田の写真パネルを展示。太田地区の「防空演習」や「託児所での食事風景」、里美地区の「小里村の献金で誕生した戦闘機」や「戦死者の村葬」-など約40点を掲示。遺族のインタビューなども紹介している。
同資料館では「戦争を知る世代が少なくなり、記憶が薄れつつある中で、過去のことでなく、多くの尊い犠牲の上に今の時代が築かれていることを忘れてはいけないということを感じ取ってほしい」と話す。
同企画展は31日まで。午前9時~午後5時(入館は同4時半)。月曜日休館。無料。