土浦藩主描いた道中絵図 市立博物館、36年ぶり公開 江戸から城下 詳細に 茨城

茨城新聞
2024年10月4日

茨城県土浦市指定文化財「土浦道中絵図」の原本が36年ぶりに同市立博物館で公開されている。土浦藩を治めた4代目藩主の土屋篤直(あつなお)(1732~76年)が1758(宝暦8)年に描いた。同館によると、絵図が作られた理由や背景は不明だが、藩主が自ら筆を執って描いた絵図は全国的にも珍しく、江戸時代中期の水戸道中(水戸街道)を詳細に捉えた貴重な資料という。

歴代の土浦藩主は職務のため江戸に居ることが多く、年に1度、約3カ月間だけ「暇(いとま)」のための帰国が許されていた。当時の土浦城下の様子を記録した「土浦在城中覚日記」(国文学研究資料館所蔵)によると、篤直は絵図が描かれたとされる同年9月13日に帰国している。だが、日記には絵図に関する記述はない。

同絵図は水戸道中のうち千住宿(東京都足立区)から中貫宿(土浦市中貫)までの約65キロの道のりと周辺の様子を描いた。長さは18.27メートルもあり、蛇腹状に折りたたみ、閲覧時に広げる「折り本」の形で製本されている。

36年ぶりに公開された土浦道中絵図の一部(土浦市立博物館提供)

道路は黒い墨と黄色の和絵の具で丁寧に描き、松並木や宿場などは素朴な筆致で描いている。道の左右には「松林」「畑」などの文字が記されている。同博物館学芸員の西口正隆さんは「文字を使うのは篤直の特徴でもある」と説明。「(篤直は)江戸から帰る途中で何人かでメモを取りながら作成していたのでは」とみる。

戦国合戦図研究を中心に江戸絵画の研究に取り組む、学習院大文学部の小口康仁助教によると、折り本という形を取っていることから「身近な人や親しい人に絵図を見せるため作ったのでは」とみる。

絵図は市内の個人が所蔵していたが、今年3月に市が購入し、市立博物館に収蔵された。西口さんは「現物では筆遣いや色合いをはっきりと観察できる。細かく描かれた絵図を見てもらえれば」と呼びかけた。

展示は10月20日まで。ほかに「常州土浦城図」(県指定文化財)、「水戸様御入国之図」(市指定文化財)など41点を紹介し、絵図を中心に江戸時代の水戸道中の姿を紹介し、当時の幹線道路の機能や物流・交通を支えた人々や地域の様子にも迫る。