《食いこ》みそ蔵 やまこみそ(茨城・守谷市)
■天然醸造、伝統の味守る
海外の空港に降り立ち、深呼吸をすると「あ、これがこの国のにおいか」と感ずるときがある。翻って日本のにおいはと問われれば、和食に欠かせない調味料の頭文字を並べた語呂合わせ「料理のさしすせそ」の「せ=しょうゆ」か「そ=みそ」、あるいは「漬物」あたりのにおいでは、と日本食で育った記者は想像する。
前置きが長くなったが、みそである。「大豆と米または麦を蒸したものに、塩と麹(こうじ)を加えて発酵、熟成させたもの」と辞書にある発酵食品。いにしえからこの国の料理と分かちがたく存在し、基本となって味を調えてきた。
茨城県守谷市のみそ蔵「やまこみそ」を訪ねると、倉庫内に積み上がった700キロ入りタンクから「ポコポコ」と泡がはじける音。「今の時期、気温が上がり発酵が進む音です」と代表取締役の金剛英明さん(60)が説明してくれた。庫内はみそであってみそでない、微妙なにおいに満ちている。
それぞれのタンクの発酵具合を推し量り、換気をしたり、タンクの上下を入れ替えたりして温度管理を徹底して出来上がるみその味は-。「まろやかで、そのまま口に含んでもおいしい。バランスの取れたみそ、と言われます」と金剛さんは胸を張った。
同蔵は明治初期の創業。手作り天然醸造を旗印に、伝統の味を受け継いできた。加熱して発酵を早めたり、促進する添加物を入れたりせず、自然の温度で発酵、熟成させることをいちずに守ってきた。
醸造期間は長く、手間も暇もかかる製法だが金剛さんは「水に漬けた大豆を蒸し、米に発酵微生物を繁殖させた麹を混ぜ、塩を加える。重しを乗せて後は麹任せですから」とこともなげに笑う。
1回に仕込む大豆の量、それに見合う麹と塩分量は蔵の歴史と経験則の積み重ねから、ある程度決まっている。品質を保つため「(原料の)大豆、麹作りの米、麹菌は毎年同じ品種を同じ所から仕入れています」と金剛さん。
とはいうものの、そこは天然自然が作るもの。「蔵が違えば同じ原料、同じ麹、塩でも違ったみそができる。昨年と今年でも違う。そこが面白いところでもあるし難しいところでもある」のだという。
■お出かけ情報
▽茨城県守谷市大山新田166
▽営業時間は午前9時~午後5時、日曜定休
▽(電)0297(48)5255
▽ファクス 0297(48)5386
▽常総ふれあい道路から新守谷大通りを守谷高校方向に入り、守谷高校入り口交差点を右折、まつのき公園入り口交差点を直進。
▽Eメール:yamako30@biscuit.ocn.ne.jp
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