結城のビール誕生 元中学校長・塚越さん起業

茨城新聞
2019年9月24日

地元農産物を使ったクラフトビール誕生-。結城市の元中学校長、塚越敏典さん(61)が、クラフトビール醸造所「結城麦酒醸造」を立ち上げ、ビール造りに乗り出した。定年退職後に同市周辺の地域活性化を目指し、一念発起。一からビール造りを学び製造から営業まで、一人で励んでいる。塚越さんは「地域活性のきっかけになれば」と意気込んでいる。

塚越さんは、結城中学校長を昨年3月に定年退職。定年後も再就職先を得て働いていたが、「このままでいいのかという思いが消えなかった。自分の中で生きた証しを残したかった」。同市で生まれ育ち、市内の学校に長く勤務していたこともあり、同市を盛り上げたい気持ちもあった。

結城にないものをつくりたい-。仲間内の会話などからクラフトビールの製造を思い付いた。起業は悩んだが、「やらない後悔はするな」という自身の信条に従った。教員時代に子どもたちにも伝えていたことだ。

昨年9月から3カ月間、宇都宮市のビール工場に通うなどして準備を進めた。クラウドファンディングで支援者も募り、今年7月に同市中央町1丁目の飲食店「LOTUS」一角に、結城麦酒醸造を創業した。

クラフトビールは、小規模な醸造所で製造する手作りビールのこと。完成したビールは現時点で7種類。風味には同市産のユズやトウモロコシなど、地元農産物を用いてこだわった。ラベルなどに貼るナマズのキャラクター「ギギ丸」も自らデザイン。名前は結城秀康の幼名が由来だ。

「書類づくりから醸造、営業まで全部一人での作業。面白いが思った以上に大変」と塚越さん。不慣れな仕事は苦労も多く、くじけそうにもなるが、「自分がやるしかない」と言い聞かせ、作業に励む日々だ。教え子もそれぞれの得意分野で応援してくれ、「ありがたいし、なおさら辞められない」と話す。

ビールの原料の小麦はカナダ産だが、「最終的には結城市産の麦を使うなど、純地元産を使ったビールを造りたい」と見据える。商品は同社隣の「LOTUS」で提供しているほか、イベントなどにも出店。取り扱ってくれる販売先も探している最中だ。330ミリリットルで500円(税抜き)から。同社では世界に一つだけのオリジナルビールの製造も可能。塚越さんは「令和元年にできたビール工場。やるからには創業100年を目指したい。長く続け、地元の人も、結城を出て行った人も、自慢できるブランドに成長させたい」と話している。

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