街中を10年「定点観測」 群馬・前橋文学館で企画展示「音楽する写真」 萩原朔美特別館長がスマホで撮影

前橋文学館特別館長の萩原朔美さんが「定点観測」としてスマートフォンで撮影した前橋市内の風景を取り上げる展示「音楽する写真」が、群馬県前橋市千代田町の前橋文学館で開かれている。詩人、萩原朔太郎の孫で多摩美術大名誉教授、映像作家でもある萩原さんが館長に就任して10年余り。道路標識や自身の影といった日常風景から社会の変化や新鮮な発見を見いだす萩原さんの独自のまなざしをひもとく。来年1月24日まで。
道端のパイロン、街路樹、前橋駅の公衆電話―。展示パネルには モザイク画のように無数の写真が整然と並ぶ。写真は同じ被写体を何年間も継続して撮ったり、同じ形状のモチーフを見つける度にカメラに収めたりする「定点観測」の一部だ。萩原さんのスマホには15万枚以上の記録が保存されている。
展示作品は、萩原さんが館長に就任以来、前橋で撮った約1万5000枚の中から活用した。「前橋のベランダ」は3点の連作で、撮影時期によって太陽光が差し込む角度が変わり、反射する光や影に違いが生まれるベランダの様子から季節の移ろいを捉える。
定点観測を始めたのは20代。「最初は全くないのに社会に訴えたいことが後から出てくる。ただの電柱の変化に大きな社会の変化が現れることがある」。例えば公園の貼り紙。犬の散歩をする人に「忘れ物がないように」程度の呼びかけだったのが、最近は「犬のフン禁止」ときつい口調に変わった。「世界中で高まる人の対立や分断が貼り紙からも見える」と受け止める。
展示室の壁一面を覆うのは萩原さんがトイレに行く度に「自撮り」した写真だ。前立腺がんが再発した2年前、身体状況を把握するために始めた。母親が亡くなった時や病気が発覚した時を振り返り、「人は表現することで救われる。撮影をすることも表現すること」と語る。
会場には著作や過去のアート作品なども飾る。萩原さんは「『私の電柱』を決めると愛着が湧き、それを毎日撮影すると変化に気付く。全くつまらなかった風景が面白いものになる」と勧める。
午前9時~午後5時(入館は午後4時半)。水曜休館。観覧無料。問い合わせは前橋文学館(☎027-235-8011)へ。
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