パリ下町の生活を遊び心ある絵で 童画家・茂田井武の没後70年企画展 大川美術館(群馬・桐生市)

宮沢賢治の「セロひきのゴーシュ」など戦後児童雑誌の装丁や挿絵を手がけた童画家(どうがか)、茂田井武(1908~1956年)。没後70年を記念し、青春期の画帳「ton paris(あなたのパリ)」を収蔵する大川美術館(群馬県桐生市)は3月29日まで、企画展「茂田井武『ton paris』とパリの画家たち」を開催。パリの下町の暮らしを遊び心あふれる絵と言葉で表した画帳収録作品などを展示する。
画家を目指していた21歳の茂田井は、写生旅行と称して1人シベリア鉄道でパリに向かった。所持金はわずか。立ち寄った町で看板描きをしたり、車中で 似顔絵を描いたりして旅の資金を得た。
滞在したのは1930~1933年。美術学校に通うでもなく、日本人俱楽部(くらぶ)で皿洗いなどをしながら夜アパートに戻り、その日心に残った情景や愛すべき人々などを描いた。
画帳は約100点の作品からなり、パリに近づく車窓の風景で始まる。帰国までの期間、主に生活圏を舞台に不規則に描き継がれたとみられている。
会場には70点を展示。パリ到着後、すぐに働くことになり、職場を題材にした作品には「(前略)コック場は半分地下にありて 往来の人馬、たゞ足のみ見ゆ」の短文が添えられ、情景がデフォルメして表されている。
パン店や果物店、荒物屋、書店、カフェ、酒場、玉突き場、牡蠣(カキ)料理店、薬局、ホテル―。若き茂田井がパリの下町で目にした街や人々が水彩や色鉛筆で描かれている。
学芸員の小此木美代子さんは「心に染みわたるような色彩で、温かさや優しさ、みずみずしさが感じられる。作品に添えられた言葉にはユーモアがある」と魅力を話す。
サイズは縦22センチ、横15センチほど。スタンプを押したり、コラージュしたりしたものもある。画帳は大川美術館を創設した故大川栄二さんが東京の画廊で見せられ、「無性に欲しくなり手に入れた」。
茂田井は帰国後、雑誌「新青年」などに挿絵を描き、1941年に「ナニナニ絵本」を出版。戦後、多くの子ども向けの本と児童雑誌の仕事に取り組み、1956年、病を押して「セロひきのゴーシュ」の挿絵を描き上げたが、48歳で亡くなった。
大川さんは、茂田井について「絵の神髄である自分の心の表現を、将来ある子どもたちに向かって開く画家に終始した」などと書き残している。
午前10時~午後5時。23日を除く月曜と24日は休館。一般1000円など。問い合わせは大川美術館(☎0277-46-3300)へ。
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