屋久島「命の循環」紡ぐ 茨城県五浦美術館で公開 完成途上の巨大絵巻 日本画家の西田俊英さん 北茨城

茨城新聞
2024年5月28日

現代日本画壇をけん引する作家の一人、西田俊英さん(71)が、屋久島(鹿児島県)の原生林を題材にした絵画の制作に挑んでいる。作品名は「不死鳥」。完成作は全長90メートルを超えるという。茨城県天心記念五浦美術館(北茨城市大津町)で開催中の「西田俊英展 不死鳥」では、これまでに描き上げた約50メートルを公開。原生の巨樹や清らかな泉、小さな生き物たちが織りなす巨大絵巻は、屋久島の「命の循環」を紡いでいる。

西田さんは1953年、三重県伊勢市生まれ。武蔵野美術大在学中の75年、再興院展で初入選し、同展を主な発表の場に活躍する。93年に文化庁の芸術家在外研修として1年間インドに滞在。96年にはラマ教の修行に励む青年を描いた「寂光」で第2回天心記念茨城賞を受けた。2012年には第18回MOA岡田茂吉賞絵画部門大賞に輝く。

同大教授を務めていた22年には、世界自然遺産の屋久島に約1年間移り住み、「不死鳥」の制作に取りかかる。翌年の同大退官記念展で、制作途中の「不死鳥」を発表し、「屋久島の森が人間の営みで瀕死(ひんし)の状態にあった。かけがえのない宝を形にし、後世に伝えたい」と語った。

「不死鳥 第2章太古からの森」の部分(2022年~、個人蔵)

「不死鳥」は、原生林の豊かさや生き物たちの営みに着想を得た全6章で構成。完成作の長さは全長90メートルを超えるという。

国内3会場目となる本展では、これまでに描き上げた1章から3章の一部までの約50メートルを公開。「第1章 生命の根源」では、屋久島に降る雨や霧とともに、水辺に息づくカニやカエルなどの生き物が精緻に表現されている。章の結びには、復活の象徴と言われる不死鳥が描かれ、翼を広げた優美な姿は手塚治虫の漫画「火の鳥」にも重なる。

「第2章 太古からの森」では、水鏡のような澄んだ泉や巨樹たちが出現。根元には草笛を吹く小さな妖精が描かれ、現世と異次元のものたちとの共生を想像させる。「第3章 森の慟哭」では、おのを担いだ死神のようなキャラクターが登場し、過剰な伐採が行われた苦難の時代を伝えている。

「不死鳥 第2章太古からの森」の部分(2022年~、個人蔵)

4月に開かれた本展内覧会で、西田さんは半世紀に及ぶ画業を振り返り、「大自然にきちんと向き合ってなかったことが心残りだった。豊かな原生林が広がる屋久島に腰を据え、描くことにした」と明かした。屋久島ではほぼ毎日が雨だったため、ぬれることを肯定的に捉え、雨の中で生き生きと輝く巨樹や生き物たちをスケッチしたという。

「屋久島の自然環境は地球規模で捉えるべき問題。『不死鳥』が、人間の営みを考え直すきっかけになればうれしい。完成作を見届けていただければ」

一方、茨城県・五浦での開催に「海沿いの美術館での展覧会は一番の夢だった。院展の聖地でもあり、横山大観先生たちが研さんを積んだ地で開けることを光栄に感じている」と話した。

会期は6月23日まで。月曜休館。同館(電)0293(46)5311。

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