今村さん個展 菌類、連綿と続く生命 針金やビニールで表現 水戸芸術館 茨城

ボール紙や発泡スチロールなどのありふれた素材で、浮遊感あふれる彫刻作品を手がける現代美術家、今村源さんの個展が茨城県水戸市五軒町の水戸芸術館で開かれている。自然界の生き物をモチーフとする今村さんが、とりわけ関心を示すのがキノコに代表される菌類。本展では、針金やビニールを用いたキノコや菌類などを想起させる作品を紹介している。菌糸で構成されたような造形からは、連綿と続く生命の営みが伝わる。
今村さんは1957年、大阪府生まれ。京都府在住。83年に京都市立芸術大大学院彫刻専攻修了。現在は関西を中心に活動し、カラーワイヤを使った平面作品や版画を制作するほか、針金を用いて個々の彫刻がつながり合うインスタレーション(空間表現)を展開する。ユーモラスな形態を取りながら深い精神性を宿す作品は、見る者を日常と表裏一体にある深遠な世界へといざなう。
自然界の生き物を創作の題材に据える中で、今村さんが強い関心を示すのが、キノコに代表される菌類。その理由を「菌類は人が見えない世界を想像させる格好のモチーフ。地表に顔を出すキノコは氷山の一角で、その地下には、まだ解明できていない複雑な生命のやりとりがある」と説明する。
「今村源 遅れるものの行方」展と題した本展は、今村さんにとって10年ぶりの美術館での展覧会という。普段気にも留めないような針金やビニールなどを素材にした、80年代後半から近年に至る彫刻作品など55点を集めた。天井から垂れ下がる巨大キノコをはじめ、菌糸のような素材感の造形からは、人知を超えて連綿と続く生命の気配を感じさせる。
今村さんは開幕を前にした2日、関係者を集めた内覧会に出席し、自身の作品について解説しながら創作への思いを語った。
会期は来年1月28日まで。問い合わせは同館(電)029(227)8111。