「聖徳太子絵伝」を公開 重文複製 茨城・坂東郷土館

茨城新聞
2023年10月28日

茨城県坂東市みむらの妙安寺が所蔵する国の重要文化財「絹本著色聖徳太子絵伝」の複製が、同市山の坂東郷土館ミューズの企画展で初公開されている。同寺の県指定文化財「木造聖徳太子立像」も併せて公開。会期は来年1月14日まで。

絵伝は全4幅からなる掛け軸で、鎌倉時代の作と伝わる。聖徳太子の誕生から死去までの伝記が絹地に繊細な筆遣いで描かれている。1幅の大きさは縦150・4センチ、横82・3センチ。実物は東京・上野の東京国立博物館に保管されている。

同寺では長年、太子の事績を紹介しながら教義を説く「絵解き」が行われ、その際に絵伝が使われてきた。1968年に指定されて以降、毎年4月の「太子講」に合わせて行われる一般公開以外は専用の倉庫で保管していたが、劣化が目立ってきたため寄託した。複製に当たり、同博物館の高性能カメラで撮影した画像を使い、修復専門の業者に依頼して2019年に完成した。

東に向かって手を合わせ「南無仏」を唱える2歳の聖徳太子(妙安寺提供)

全体で68の逸話があり、第1幅には、母親の穴穂部間人(あなほべのはしひと)皇后が馬小屋で太子を出産する様子や、東に向かって合掌し「南無仏」と唱える2歳の姿が描かれ、第3幅では、22歳の時に日本初の仏教寺院である四天王寺を建立した様子などが描かれている。

絵伝と併せて展示される「木造聖徳太子立像」は鎌倉時代の作で、太子16歳の時の像とされ、左手に杉の枝を持つ。江戸時代中期に寺が火災に遭った際、炎の中に飛び込んで杉の枝で消して回り、寺を守ったとの言い伝えがあり「火防(ひぶせ)の太子」と呼ばれている。

「火防の太子」の名前がある太子像を紹介する樋崎正悟住職=坂東市みむら

同寺の樋崎正悟住職(40)は「代々受け継がれてきた貴重な絵伝を多くの人に見てもらい、太子の事績に触れてほしい」と話す。11月5日と12月17日には、樋崎住職の絵解きや朗読グループの紙芝居が行われる。