《食いこ》hajimari(茨城・大子町) のんびり空間でコーヒー

茨城新聞
2022年6月9日

「お客さんがのんびりできる空間を大事にしている」

築約150年の古民家でカフェを営む和田まりあさん(32)と中村聖さん(34)はそう言って窓の外を見やった。視線の先には、青々とした山や田畑といったのどかな風景が広がる。

2人は茨城県北地域の課題解決などに取り組む県北起業型地域おこし協力隊員。つくば市出身の和田さんは、水戸市内のコーヒー専門店に勤務して経験を積んだのち、「自分が好きなコーヒーで大子町の活性化に役立ちたい」と、同隊員を志望した。

中村さんは神奈川県藤沢市出身。都内の建築設計事務所に勤務するうち、古民家の再生などに興味を持ち、地方での独立を考えたという。「これまで培ってきた技術を生かしつつ、地域のにぎわいもつくり出せたら」と活動を決めた。

県が主催した起業イベントで知り合った2人は「一緒にお店を開いたら面白いよね」と意気投合。同町内で移動販売式のコーヒースタンドを運営しながら約8カ月かけて古民家を改装し、今年5月、カフェをオープンさせた。和田さんが焙煎(ばいせん)や取り扱う豆の選定など、コーヒーに関わることをメインで担い、中村さんが町内の空き家から引き取った小物入れなどの古家具を手直しし、店先で販売する。

町内の空き家にあった家具を中村さんが改修し、展示販売している

 

 

オープンして約1カ月がたち、常連客も増えてきた。落ち着いた古民家の雰囲気と店内から眺められる豊かな自然が相まって、来店客からは「時間を忘れてゆったりできると言ってもらえる」と中村さん。店を切り盛りする2人にとっても、心穏やかに過ごせる場所となっている。

カフェに野菜のお裾分けが届いたり、気にかけて顔を出してくれる人がいたり、「町内の人々の温かさにも励まされている」と感謝する和田さん。2人の挑戦は始まったばかりだが、和田さんが入れるコーヒーは、県北山間部に暮らす人たちに、ほっとする時間を提供している。

■お出かけ情報
hajimari
▽大子町矢田654
▽営業時間は午前10時~午後5時
▽定休日は月・火・水曜日
▽インスタグラムのアカウントは@hajimari_ackc