稲田石、釉薬原料に 砕石・加工の微粉末利用 笠間焼協組・陶芸大学校 色や斑点、味わい深く

茨城新聞
2022年2月20日

笠間焼協同組合は、茨城県立笠間陶芸大学校との共同研究で、笠間市の地場産材「稲田石(稲田御影石)」の微粉末を釉薬(ゆうやく)原料として利用する技術を開発した。原料は「笠間長石(ちょうせき)」と名付けた。含まれる微量の鉄分が作用し、味わい深い色調や斑点を引き出すという。組合の大津廣司理事長(74)は「笠間焼250年の節目に開発できてよかった。さらなる発展に向け、販路拡大につなげたい」と意欲を示す。笠間長石を使った笠間焼は、今春の「笠間の陶炎祭(ひまつり)」で展示販売する。

共同研究は、組合が大学校に事業委託し、市が支援する形で昨年6月にスタート。大学校の専門職員が中心となって進められ、中核メンバーとして笠間焼作家12人が協力した。

笠間長石の原料は、地元の石材業者が稲田石の原石を砕石・加工する際に発生する微粉末。大学校によると、1粒の直径は数十マイクロメートルで、主成分は、稲田石と同じ長石、石英、黒雲母の三つの鉱物となる。元素分析の平均値は、ケイ素が約73%を占め、アルミニウムが約16%と続く。代表的な長石原料の釜戸長石(岐阜県)とほぼ同様の成分となった。

鉄成分が約1.1%と、釜戸長石の含有割合と比べ約10倍と大きいのが特徴だ。微量の鉄成分が作用し、焼き上がりの釉薬の発色に影響を与える。酸化焼成で薄い黄色、還元焼成では薄い青色がかかり、特に透明釉では味わい深い黒雲母の斑点が出やすくなる。

大学校は「笠間らしさ」を目指し、9年前から地場産の未利用資源の原料化を模索していた。稲田石を使うアイデアもその一つにあったが、石の粉末化がネックになっていた。微粉末の安定確保が見込めるようになり、釉薬原料として利用する技術開発に着手した。

稲田石を利用する構想を温め続け、開発の柱となったのが主任研究員の吉田博和さん(44)。元素分析やテストピース制作など基礎的な作業を担った。吉田さんは「笠間長石は市販の長石の代替原料になる可能性を秘めている。多くの作家さんに使ってもらい、笠間焼に新たな魅力が生まれてほしい」と願いを込める。

大学校専任講師で陶芸家の根本達志さん(57)は、笠間長石を主体にシンプルな配合の釉薬で、草原や大地を想起させる「アースカラー」の器を試作した。「水に溶けやすく、沈殿してもすぐ混ざり、釉薬を掛けやすい。赤土、白土、半磁器とも定着が良い」と利点を挙げ、「笠間長石主体の釉薬でも十分勝負できる。色のバリエーションが増え、笠間焼はさらに発展していくのでは」と期待を膨らます。

大学校ロビーでは、共同研究の成果品として、笠間焼作家による試作品やテストピースなどを展示している。

笠間長石を釉薬に使った試作品

 

★稲田石(稲田御影石)
約6千万年前に地下深くでマグマが固まってできた花こう岩の一種。品質の高さや美しさから「白い貴婦人」とも呼ばれる。江戸時代から石材として利用され、笠間市稲田地区で本格的な採石・加工