《旬もの》どぶ汁(北茨城市) あん肝の濃厚なコク堪能

茨城新聞
2022年2月4日

「東のアンコウ 西のフグ」と並び称され、茨城県の冬の味覚を代表するあんこう鍋。北茨城市は、肝の濃厚なコクが楽しめる郷土料理「どぶ汁」の発祥の地として知られている。冬本番の今、寒さで肝が肥大化し、おいしい時季を迎えている。

どぶ汁は漁師が船の上で体を温めるため「漁師飯」として食べ始まったのが起源とされる。北茨城市観光協会によると現在、市内でどぶ汁が食べられる旅館や飲食店などは34軒ある。そのうち、仲買人の資格を持つ旅館や民宿は6軒あり、店主自ら平潟漁港へ出向き、魚を品定めする。

今月中旬の晴れた日の正午すぎ、同漁港に漁を終えた大型船と小型船11艘(そう)が次々に入港した。アンコウ、ヒラメ、タイなど魚種ごとに分けられたたるが、同漁業協同組合地方卸売市場に運ばれ競りが始まった。

深海魚のアンコウは底引き網で取るため、小アジやヤリイカなど多種多様な魚たちと一緒に揚がってくる。この日揚がったアンコウの大きさは、1・8~16キロほど。ある漁師によると「この辺りで揚がるアンコウは、餌となる魚が豊富のため肉付きがいい」という。

温泉民宿かね久の2代目店主・阿部博昭さん(72)も仲買人の資格を持ち40年来、厳しい目で魚の仕入れを行う。アンコウは「身(尾)の部分がふっくらし、お腹辺りが膨らんでいない物を選ぶ」という。口が大きいため、他の魚を丸ごとのみ込み、お腹に入っていることがあるためだ。

どぶ汁は、肝をいった濃厚なスープに、アンコウの七つ道具「肝、だい身、ぬの(卵巣)、えら、とも(ひれ)、胃(水袋)、皮」と季節の野菜が材料。かね久が提供するどぶ汁は、父昭二さん(故人)の作り方を継承し、肝をぜいたくに使っているのが特徴。阿部さんは「地元の人は、胃や皮を好んで食べる」と説明しながら、あっという間にさばいていった。

大鍋で肝とみそを入れていり、軟らかくゆでたダイコンと調味料、アンコウの具材を入れ、ぐつぐつと煮込む。「いると、黄色から赤に変化するが、色の違いはさばいてみないと分からない」といい、「北茨城の旅館や民宿、店ごとに入れる具材も違う。鮮度抜群の肝の味を楽しんでもらいたい」と、笑顔を見せた。

肝とみそを練って下ごしらえ

 

■メモ どぶ汁
▽温泉民宿かね久の住所は、北茨城市平潟町長浜1576の3
▽ランチ:1人5000円~(どぶ汁のほか刺し身・アンコウの供酢・煮魚などがセット)/宿泊:どぶ汁は3000円(1人前・2人前~受け付ける)。
▽(電)0293(46)1486。
※電話にて要予約。