「本の美術品」並ぶ 童画の先駆者、武井武雄展 茨城県近代美術館

茨城新聞
2021年7月27日

「童画」の先駆者として知られ、大正から昭和にかけて活躍した武井武雄(1894~1983年)の小型絵本を紹介する「武井武雄 刊本作品の世界」が、水戸市千波町の茨城県近代美術館第2常設展示室で開かれている。武井が手掛けた「本の美術品」を展示し、物語や絵に加え、素材や印刷、装丁にまでこだわり抜いたブックアートの世界が楽しめる。

長野県岡谷市に生まれた武井は、「子どもの目に触れる絵こそ、本物の芸術であらねばならない」という信念の下、25年、初個展で「童画」という呼称を用いて作品を発表した。その後、日本童画協会の結成に関わるなど、童画の確立に力を注いだ。

今展では、雑誌の挿絵や絵本の仕事のほか、武井がライフワークとして手掛けた「本の美術品」にスポットを当てる。35~83年まで、年に1~3冊のペースで制作し続けた139冊のうち、125冊を紹介。いずれも限定発行で希少性が高く、一部を除き同館が所蔵している。

会場に並ぶのは、伝統的な浮世絵版画の技法を取り入れた「KOKESHI」や、絵入り童話の「ラムラム王」、アップリケの「HAREM」など。紙や布、麦わら、金属、セロハン、磁器など、本に使わない素材に挑戦し、版画や工芸技法、特殊印刷など、職人や企業と手を組み、質の高い仕上がりを実現した。

「KOKESHI」(1946年、©岡谷市・イルフ童画館)

 

コブラン織の技法を取り入れた「笛を吹く城」は、8ページ分を手織りするのに、西陣織のベテラン職人2人で半年かかったという。同館主任学芸員の永松左知さんは「本の宝石と呼ばれるように、量産できない貴重なものばかり。技法と物語が一体となり、武井のユーモアがあふれている」と話している。

会期は9月12日まで。入場は一般320円、満70歳以上160円、高大生240円、小中生180円。月曜休館。問い合わせは同(電)029(243)5111

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