阿見産そば、認知度向上へ 耕作放棄地を活用 茨城大と農家連携 乾麺開発やフェア開催

茨城新聞
2021年1月13日

耕作放棄地を活用したソバ栽培が、阿見町で軌道に乗り始めた。茨城大農学部(同町中央)と有志の農家が2013年に1ヘクタールで始めたのをきっかけに、本年度で73ヘクタールにまで広がった。17年度には品質向上などの面で模範となる生産者を表彰する「全国そば優良生産表彰」を町内の農家が受賞し、品質が認められる一方で、町産そば粉の認知度はまだ低く販売先の拡大に課題が残る。町は町産そば粉を使った乾麺の開発や、そば屋と連携して秋そばフェアを開催するなど特産化とブランド力の強化に力を入れている。

▽13年に1ヘクタールから
同町農業振興課によると、町内の耕作放棄地率は15年時点で36・3%に上り、県内で3番目に多い。10年代から耕作放棄地が増加したことから、対策としてソバ栽培に着目。13年に茨城大農学部の学生らと農家が連携して1ヘクタールの放棄地を活用して栽培し、そば粉が製粉業者から高評価を得たのをきっかけに取り組みが広がったという。同学部は現在も、ソバの品質向上のための研究や、耕作放棄地の活用方法について協力している。

ソバは種まきから収穫まであまり手がかからず、約3カ月で収穫できることから、13年に1ヘクタールだった栽培地は増加傾向にある。15年には10ヘクタールを超え、17年は53・8ヘクタール、20年は73ヘクタールに拡大した。現在は農家23戸が参入し、有志農家がソバ栽培の振興や産地化を進める団体を設立するなど、取り組みを広げている。

▽組合を設立
ソバを栽培する農家の増加を受け、施設や農業用機械を共同で利用する動きもある。同町内のソバ栽培の農家8戸で構成する「君原アグリ営農組合」は19年1月に設立。高額なコンバインなどの農業用器具を共同で購入して利用するほか、高齢な農家の作業を受託している。組合長の細田展之さん(54)は「何も育てないよりは、と耕作放棄地になる前に参入する農家もいる」と話す。

一方で、ソバのみで生計を立てるのはまだ難しく、国の補助金に頼る部分が多いという。「阿見産そば粉のブランドが確立されて、販売ルートが拡大されるとうれしい」と述べた。

▽期間限定
町はブランド力を高めようと、17日まで、町内のそば屋などと連携して秋そばフェアを開催。町内産の新そばが食べられるほか、パン屋などでそば粉を使った期間限定のメニューが味わえる。

また、町産そば粉を使った乾麺を開発し、町内8店舗で販売している。町商工観光課の担当者は「お土産として買ってもらい、認知度を高めたい」と話す。

フェアに協力するそば屋「信太の里」(同町若栗)の店主・湯原栄佐夫さん(71)は町産そばについて「歯応えや香り、風味が良い」と評価する。ソバ栽培も手掛けており、「町産のそば粉の良さを多くの人に知ってほしい」と話した。

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