自宅と店舗、落雷直撃 全焼乗り越え再出発 坂東「お茶の根本園」

茨城新聞
2021年1月6日

高級茶葉や関連商品を製造販売する「お茶の根本園」(坂東市生子)が昨年12月、新店舗での営業を開始した。同社は2019年9月に同市を襲ったゲリラ豪雨に伴う落雷で、店舗と自宅が全焼。仮設店舗などで営業を続けながら、再起に向けて準備を進めてきた。6代目社長の根本宏紀さん(37)は「周りに助けられて再開できた」と感謝しきり。新店舗では動画配信にも取り組み、日本茶の魅力を若い世代や海外に広めたい考えだ。

同社が落雷被害に遭ったのは、19年9月10日午後9時すぎ。落雷当時、屋内にいたという根本さんの祖父で先代の録郎さん(83)らによると、大きな衝撃音がした後に屋内を煙が覆い、壁から火が噴き出してきたという。録郎さんは「生きた心地がせず、子どもたちを連れて逃げ出した」と振り返る。

商談でハワイへ向かうため成田空港にいた根本さんも、火災の連絡を受けて急きょ帰宅した。家族は全員無事だったが、衣類や住居を失って「これからどうすれば」と、途方に暮れたという。

ただ、幸運にも隣接する製茶工場は延焼を免れ、業務用パソコンなども奇跡的に無傷で見つかった。根本さんは反射的に「出荷を止めちゃいけない」と被災翌日から出荷を再開。仮設店舗での営業を続けながら、中断していた商談も成立させ、高級茶葉を使った抹茶アイスなどのハワイ輸出も実現させた。

新店舗がオープンしたのは昨年12月14日。店内は、白色を基調にしたシンプルな造り。お茶を「魅せる」ことを意識した試飲スペースも設置されており、壁面には同社の上位ブランド「根本茶寮」のロゴマークも配置した。

根本さんは今後、旧店舗のアットホームな雰囲気を残しつつ、試飲スペースを活用して海外や若年層向けに動画を配信する予定で、「海外バイヤーへアピールしたい」と意気込む。

心機一転の再スタートを切り、「雷神さまに切り替えのチャンスをいただいたかな」と根本さん。日本茶の魅力発信へ、新たな挑戦が始まった。

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