《食いこ》とやま荘ハム(石岡市) 理想のベーコン追い求め 「おいしかった」の声に手応え

茨城新聞
2020年11月17日

薫製器を開けると、白い煙が立ち込め、いぶされたベーコンの塊が現れた。石岡市にある「とやま荘ハム」の勝田邦裕さん(61)はベーコンの出来具合を見る。「そのまま食べてもおいしいが、いいだしが出るので、煮込み料理や野菜炒めに使ってほしい」と表情を緩めた。

大学で食品工学を専攻した勝田さんは卒業後、祖父が設立した東京・大田区の食肉加工会社で、ハムやベーコン作りに約10年携わった。その当時「素材のおいしさを生かすため、添加物を使わないハムやベーコンを作る」という夢があったが、社長だった父親に受け入れられず、会社も事業を閉じた。

その後、都内で会社員生活を送っていたが、2016年、義母の介護で妻恭子さん(61)の実家がある石岡市に移住。当時は実現が難しかった夢がよみがえった。加工所を併設した新居を建て、心機一転。17年恭子さんが代表となって「とやま荘ハム」を開き、勝田さんは着色料と保存料、化学調味料を使わない理想の食肉加工品作りを始めた。

「添加物を入れないと、日持ちがしない。管理を厳しくしなければならないし、作るのに手間もかかる」。勝田さん一人で管理できるだけの製品を作り、真空パックにして販売している。

材料の豚肉は県産の「つくば美豚」を選んだ。ベーコン作りは週1回のペース。食塩と砂糖、香辛料などの調味液に漬け込んだ豚ばら肉の塊を桜のチップで6、7時間スモークしたら5、6時間休ませながら3日かけて薫製する。「調味液は肉のうま味を引き出す塩分濃度にするのに苦労した」と味を追求した。

現在作るのはベーコン、1週間以上調味液に漬け込む熟成ロースハム、黒こしょうをまぶしたパストラミ、ポークジャーキー、国産鶏胸肉のスモークチキンの5種類。

添加物を使わないベーコンやハム

 

市内のJA新ひたち野農産物直売所「大地のめぐみ」に出すほか、つくば市や守谷市などで開かれる青空市に出店する。林に囲まれた住宅地の高台にある自宅で、毎月第2土曜日に直売を行う。「対面販売で『おいしかった』という声を聞けるのがうれしい」と手応えを感じている。

■お出かけ情報
とやま荘ハム
▼住所は石岡市東田中1498 の17
▼営業は第2土曜日午前10 時~午後5時
▼(電)090(5348)5690

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