《いばらき御朱印めぐり》日立・泉神社 あらゆる縁結ぶ女神 芸術的デザインに一新

茨城新聞
2020年11月10日

激しい往来の国道245号から、路地を150メートルほど入ると、騒々しさとは無縁の森閑とした空間が広がる。境内には清水がこんこんと湧き出る泉。日立市水木町の泉神社=大塚祐慶宮司(34)=では今年、御朱印をよりデザイン性の高いものに一新した。「日本の伝統文化を御朱印を通して伝えて行きたい」。若き宮司の新たな試みは緒に就いたばかりだ。

同神社の歴史は古く、927年に成立した「延喜式神名帳」には既に記載が見られる。社記には、ある日天から霊玉(れいぎょく)が落ちてきてこの地に衝突し、清水が湧き出て泉になったとあり、この霊玉を神格化して祭神天速玉姫命(あめのはやたまひめのみこと)として祭ったのが同神社の興り。機織を司る天棚機姫神(あめのたなばたひめ)の娘とも伝わる女神だ。

祭られているのは女神だが、東国平定の前線基地としての地域性を反映して、多くの武将も勝利を願って祈祷(きとう)に訪れたともいう。

「『常陸国風土記』にも記される泉の傍らでは古来、夏の暑いころ男女が集まり、海山の産物を持ち寄った宴(えん)を楽しんだと伝わっています」と大塚宮司は泉の由緒を語る。

そのせいか、同神社は縁結びの神様として「参拝者の7割が女性」という。さらに「男女の縁に限らず、仕事やチャンス、物との縁を結ぶ神として地域の信仰を集めてきました」と同神社の成り立ちと来歴を解説する。

御朱印が広く一般の関心を集めたきっかけは伊勢神宮の式年遷宮だったが、改元も御朱印熱に拍車を掛けた。同神社も例に漏れず、参拝者が押し寄せたという。

御朱印は神社へ関わりを持ってもらう格好の入り口。とはいえ旧来の意匠のままでは、多くの人を引きつける魅力には乏しい。

そこで同神社では、印の朱色と墨書は守りつつ、文字を図案化した「角字」や、言葉を連想させる「判じ絵」の印を作り、デザインを一新した。一枚一枚押印し、手書きで仕上げる。神社の由緒を分かりやすく解説したものも添えた。一年を通じて授与する3種類のほか、月替わり限定も用意した。大正時代を意識したレトロモダンな雰囲気をデザインに加味した御朱印帳も新年に向け準備中だ。

神紋の三つ葉葵(あおい)をあしらった11月限定の御朱印

「これからは時代と共に神社も進まなければならない。伝統を守りつつ進化する神社。その手始めがアート性の高い御朱印」と大塚宮司の夢は膨らむ。

メモ
アクセス:国道245号の西側、「泉神社」看板の道を入ってすぐ右折すると鳥居が見える。JR大甕駅からは北へ約850メートル、徒歩約10~12分
住所:日立市水木町2の22の1
電話:0294(52)4225
受付時間:午前9時~午後4時。
御朱印:通年で出している3種類(500円)、月替わりの限定(1000円)とも宮司のデザイン案を基にデザイナーが仕上げたオリジナル。宮司駐在時に授与。御朱印帳は来年1月から。

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