魯山人の旧居、庭園改修が完了 笠間・春風萬里荘 建物と調和、回遊性向上

茨城新聞
2020年11月4日

笠間市下市毛にある北大路魯山人(1883~1959年)の旧居「春風萬里荘(しゅんぷうばんりそう)」で、クラウドファンディング(CF)を活用し昨年2月から進められていた庭園の改修事業が終了した。歩きづらかった急階段は手すり付きの緩やかな坂道に生まれ変わり、散策路も拡張されるなど全体の回遊性が向上。樹木も適度に伐採されて光と風が通るようになり、建物のかやぶき屋根とも調和し優美さを増した。

春風萬里荘は、笠間日動美術館の分館で、日動美術財団(笠間市)が管理・運営する。

もともとは江戸時代初期の豪農の家で、神奈川県厚木市近郊にあった。陶芸家、書家、美食家などとして知られた魯山人がアトリエ兼住居にするため、北鎌倉に移築。それを魯山人没後の1965年、笠間日動美術館の創始者、故長谷川仁氏が「芸術の村」のシンボルにと、現在地に移築した。建物内には魯山人が自ら設計した茶室「夢境庵」をはじめ、自然石を組み上げた暖炉、織部の陶板を張り込んだ浴室などが、当時のままに残されている。

改修の対象となったのは、建物の前に広がる約1100坪の庭園。移築から半世紀以上が過ぎ、花木は老い、木製の枕木や池の護岸も朽ち始め、さらに地盤の変化で庭園内の散策路に危険箇所が目立つようになっていた。

同財団は、安全確保とバリアフリー化を図るため、昨年2月に改修工事を始めた。同年4月には事業費の一部を賄うため、CFを通じた寄付を募ったところ、131人から目標額の500万円を上回る約654万円の支援金が寄せられた。

改修事業は今月下旬に終了。歩きづらかった急階段は手すり付きの緩やかな坂道に生まれ変わり、池の護岸などが整備されたほか、成長し過ぎた樹木を伐採したことで庭園に光と風が通るようになった。また、建物西側の急斜面を造成して新たに池や散策路を設けたことで、全体の回遊性も向上したという。

同財団の長谷川徳七代表理事(81)は「CFを通じて多くの支援が寄せられたことに感謝の気持ちを表したい。魯山人が愛した建物を映えさせることと、バリアフリー化を目標に改修事業に取り組んだ。末永く愛される庭園になってほしい」と話した。

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