《旬もの》深い愛情、笑顔のカトレア 山野井洋蘭(常総市)

茨城新聞
2020年9月14日

気品高く咲き、イベントやセレモニーを彩る洋蘭(ようらん)のカトレア。常総市にある山野井洋蘭のガラスの温室では、紫がかったピンクのカトレアが華やかな姿を見せていた。切り花のカトレアを年間約16万輪、土浦市や東京都内の市場などに出荷する。カトレア専門の栽培農場で、主力はピンク系の大輪。白やオレンジなど色やサイズにバリエーションのある花も手掛ける。

オレンジ色のカトレア

代表の山野井喜仁さん(55)によれば、カトレアは生育が遅く、種をまいてから出荷までには10年もの歳月を要する。「7、8年でようやく花が咲くが、弱々しく売り物にならない。10年を経て、ようやく力強い花になる」

春と秋に咲く品種が多いカトレアだが、電照や遮光のシェードで開花を調整し、一年を通して安定して出荷する。「暑さ、寒さは大敵」と繊細な花のため温室は冷暖房を完備。温度や湿度などを自動制御、ウェブカメラも設置して栽培管理を徹底する。病気やウイルスを防ぐ対策として、花を切るときに使うカミソリや株分けのはさみは1回ごとに滅菌消毒を施す。総面積4752平方メートルの温室に目を行き渡らせ、品質向上と作業の効率化を図っている。

山野井洋蘭は、もともとは減反対策として、1972年に当時手に入りにくかった洋蘭栽培を手掛けたのが始まり。すぐにカトレア専門になった。喜仁さんは2代目。26歳で就農し、2001年に代表に就いた。

コロナ禍でイベントなどの自粛により需要が激減。売り上げが落ち込む中、鉢花や切り花のインターネット販売に今まで以上に力を入れる。4、5月は「お家で咲かせるカトレア」を企画し好評だった。暑さが続く9月までネット販売は休止し、10月から再開する。

全国や県の品評会では数々の賞を受賞。19年度日本洋蘭生産協会全国品評会では、30輪を寄せ植えした尺鉢が農林水産省生産局長賞に輝いた。

規格外の花を生かし、妻の君代さん(53)が約3年前から、カトレア染めを始めた。生花のような上品な色合いを出すまで、媒染や染める回数を変えるなど試行錯誤を繰り返したという。農業仲間に教えることもある。

社訓は「カトレアで世界中を笑顔にする」。「娘を育て嫁に出すような気持ち」で、深い愛情を持って栽培に当たっている。

■メモ
山野井洋蘭▽住所は常総市水海道山田町935

▽定休は金曜・日曜
▽(電)0297(22)2740、090(8818)6322
ホームページはhttps://www.ran-yamanoi.com

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