《釣り》源流域で一点狙い 大子・八溝川のイワナ ドバミミズ餌に6匹

茨城新聞
2020年8月22日

今年は少し遅れ気味に夏がやってきた。じめじめした梅雨の間は夏が待ち遠しかったが、本格的な暑さの到来も恨めしい。酷暑の8月半ば、県内で最も涼しいと思われる八溝川源流域へイワナを求め分け入った。

私の住む大子町の八溝山は茨城県で最も標高が高い。流れる八溝川にはダムもなく、周辺は豊かな自然を保っている。麓の集落を車で通過し、山頂に近い流れを目指した。

林道に入ると砂利道が続く。その砂利道も途切れてしまうと、そこからは徒歩だ。途中、大量のアブに襲われた。うっかり息をすると鼻や口に入ってくる。自ら調合した強力虫よけ剤を顔と指先に塗り込むが、それでも多少は刺される。

虫は苦手ではないが、たまらず谷に逃げ降りた。川筋はひんやりとして、アブもここまでは追って来ない。八溝川源流域は黒く角ばった岩が多い。

水質は極めてよく、川石の表面は滑らか。足を置いても滑ることはない。やがてワサビ田に出た。スマートフォンのGPS(衛星利用測位システム)で現在位置を確認。八溝山の山頂まで直線で約2キロと出た。

八溝川源流域のワサビ田

「そろそろ竿(さお)を伸ばしてみるか!」と流れに餌のブドウ虫を入れるといきなり掛かって来た。なかなかの手応えでうれしい。1匹目はなんとヤマメだった。「こんなにも上流にいるんだ!」と驚きの声が出た。

魚を持ち帰る用意をしてこなかったので、写真を撮って、優しく流れに戻した。こういう源流の釣りはどんどん移動し、大物がいそうな所で竿を出す。

ヤマメが流れを釣る「線」の釣りだとすれば、イワナはいそうな場所を一点に絞って狙う「点」の釣りである。今日は特餌にドバミミズを持ってきた。鉛筆くらいの太さで臭く、しかもイワナの大好物だ。

大きすぎる餌は針とのバランスが悪いため、はさみでカットする。すると餌が弱ってイワナに見切られてしまうので餌を水中に入れるチャンスは1回きり。しかしそこにイワナがいればワンチャンスで十分だ。

もぞっとしたアタリがあり目印が移動した。小さなイワナほど、餌を物陰まで運んでのみ込もうとする。アワセを入れるとなかなかのファイトで岩の下に潜り込もうとする。水際に寄せた獲物は26センチ。この1匹を皮切りに同サイズが続けて6匹も釣れた。

上流へと向かうにつれ、川はいくつもの支流に分かれ、川幅も狭くなった。魚も小さくなってきたので竿を納めた。当たり前のようにイワナが釣れる自然が大子町にはある。そしてそれを体験するには、それなりの体力と装備が必要であるが、それが本物の自然というものかと思う。(奔流倶楽部渓夢上谷泰久)

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