《食いこ》風味豊か「三たて」の十割そば いきいき里山友蕎庵(桜川市) 自然に囲まれて

茨城新聞
2020年8月17日

桜川市の「いきいき里山友蕎庵(ゆうきょうあん)」は、北は雨引山、南は加波山に連なる燕山(つばくろさん)の麓にある。車1台がやっと通れる坂を上っていくと、生い茂る緑に古民家がたたずむ。沢が流れ、鳥のさえずりが聞こえる豊かな自然の中、あるじの飯村泰雄さん(72)が打つ十割そばを味わえる。

定年退職後、自ら切り開いた自然豊かな地でそば店を構えた飯村泰雄さんと催しを手伝う稲葉美樹さん=桜川市大曽根

 

飯村さんは元警察官。1968年県警に入り、白バイ隊員、所轄署の鑑識、刑事畑などに携わった。県民を守る厳しい現場から、定年後は「自然豊かな場所でゆっくり過ごしたい」と約1万平方メートルの土地を購入。4年がかりで警察官時代の仲間らの助けを受けながら山を切り開き、アジサイやミカン、山野草を植栽するなど環境を整えた。明治時代末期に建てられ、約10年間、空き家だった古民家を改装した。

そば打ちを趣味で始めたのは50歳のころ。「最初はそば店を営業するつもりはなかった」が好評で、2012年に店を構えた。「変なものは出せない。店を始めてからが苦労した」と技術を磨く。「こね方一つで味が変わる。同じような水加減でも、納得できるそばができるとは限らない」とそば打ちの難しさを語る。

そば店を開く決め手となったのは燕山の花こう岩から染み出る湧水。敷地内にこんこんと湧き出ており、周辺にはクレソンが自生する。

そばは石臼でひき、その日の分を打つ「ひきたて、うちたて、ゆでたての三たて」。常陸秋そばをメインに、夏は群馬県産の新そばを取り寄せる。「初めて食べたときはおいしくてびっくりした」と居合わせた女性客。口コミで広がり、客を待たせてしまうことが増え、3日前までの完全予約制を取る。

天ぷらや付け合わせは春のコシアブラなど里山のごちそうが味わえる。敷地内で採れた山菜や自宅で育てた野菜を使う。この日は、ワラビの煮付け、ミョウガやエゴマの天ぷらなどが登場した。

飯村さんが打つそばと四季折々の里山を楽しみに来る常連客も多い。「人の輪を広げたい」と春と秋のハイキング、バーベキューなどを企画する。同市在住の稲葉美樹さん(52)はそば打ち体験などイベントの窓口役を務めるようになった。飯村さんは「今が楽しい。生きがいを感じる」と充実した表情を見せた。

■お出かけ情報
いきいき里山友蕎庵
▼住所は桜川市大曽根1540
▼営業時間は午前11時~午後2時、3日前までの完全予約制
▼(電)090(1118)9795

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