地域の棲まい方 考察 14組 建築とアートの視点で アーツ前橋で企画展 

上毛新聞
2015年11月13日

時代や社会の移り変わりに呼応して変化する「棲(す)まい方」を、建築とアートの視点で掘り下げる企画展がアーツ前橋(前橋市千代田町)で開かれている。県内外の建築家やアーティスト14組が、自然環境を生かした建築やコミュニティーを生む共有スペースなどの事例や作品を発表。生活空間から地域社会を見つめ直す必要性を訴えかけている。

「街とつながる美術館」をテーマに設計されたアーツ前橋。その特徴的なデザインは前橋の街中の風景に着想を得ている。設計を手掛けた水谷俊博建築設計事務所(東京)と前橋市の写真家、木暮伸也さんによる作品「The Scene―此処にある景(けい)―」は、市内の一部を写した風景写真に、アーツ前橋の一部分を映り込ませ再度撮影したもの。一枚の写真の中で設計の参考にした風景と実際の同館が重なり合う。

◎自然環境生かす
風通しの良さを求めたり、強風から家屋を守るための防風林を伴う住宅など、かつては自然環境を考慮した建築が当たり前のように見られた。建築設計事務所「Eureka」(さいたま市)は「フィールドノート 地図を描くこと、環境と相克する建築へ」を通して、こうした考え方を見直すきっかけを提供している。
同事務所は国内外でのフィールドワークを元に、地域に溶けこむ集合住宅の設計を手掛ける。企画展では東南アジアの集落を調査してまとめたポートフォリオを木枠からつり下げるとともに、プロジェクターで映像を映し出したり、タイの高床式住居と日本の新しい建築技術を生かして設計した集合住宅などの模型を紹介。現代を生きる日本人が自然とどう付き合い、備えるべきなのかを考えさせる。

◎芸術家の作品も
アーティストの視点で地域を捉えた作品も見られる。作家の三田村光土里さん(東京)は、前橋市大手町の「るなぱあく」と周辺の個人商店が立ち並ぶ光景に着想を得て、子どものころに訪れた「夢への憧れをかなえてくれる場所」を完成させた。出品作品「ルナパーク」は前橋の街中の写真やレコードを用いたオブジェ、映像によるインスタレーションで、郷愁を誘うファンタジーの世界を作り出した。
多様化する家族の在り方を、シェアハウスなど他人同士が共同生活を送る空間に焦点を当てて考えさせるのは建築家ユニット「ツバメアーキテクツ」(東京)。出品作品「新しい家族から学ぶ」は、設計段階から居住者が加わり、個々の要望を聞きながら修正を加えていく手法で、多世代が住める家を実現する「事前リノベーション」の事例を発表している。
同館の住友文彦館長(44)は「建築というテーマをきっかけに住む場所に目を向け、さらに自分たちが生活する地方社会について考えてほしい」と話している。

【メモ】企画展「ここに棲む 地域社会へのまなざし」は1月12日まで。午前11時~午後7時。一般600円。28日午後2時から建築家の水谷俊博さんによる「アーツ前橋の設計者と巡る美術館ツアー」を開催。参加無料(要鑑賞券)。問い合わせは同館(☎027・230・1144)へ。

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