《食しる》20年かけ、上品な香りと甘さ 茨城生まれメロン・イバラキング

茨城新聞
2020年6月1日

茨城県は全国トップの出荷量を誇るメロン王国。鉾田市や八千代町、茨城町など各地で作られており、ちょうどいま出荷の最盛期を迎えている。

スーパーの果物売り場に並ぶメロンはキュウリと同じウリ科の仲間。農林水産省野菜出荷統計ではイチゴ、スイカとともに「果実的野菜」に分けられる。

茨城県で栽培される主な品種は、シーズンの幕開けを飾るオトメ、緑肉の定番アンデス、県オリジナル品種のイバラキング、赤肉のクインシー、縦長のタカミ、高級メロンの代名詞アールス系など。春から秋にかけて、これらの品種がリレーしていく。茨城県生まれのイバラキングは、上品な香りと甘さで滑らかな口当たりが特徴。一般的なメロンより1割ほど大きく、日持ちも良い。主に5月上旬~6月中旬ごろ出荷される。

■匠の技

イバラキングが完成するまでには20年を要した。県農業総合センター(笠間市)は1990年ごろ、4月から5月上旬の早い時期でも大きく育つ、おいしいメロンを作ろうと、新しい品種の開発を始めた。98年に育成した品種は、味は良かったものの、栽培が難しく普及しなかった。甘い、大きいなどの長所を持つメロンを選抜し親候補を選び、さらに400通り以上の親を掛け合わせて選び抜いて、イバラキングが誕生した。滑らかな口当たりと豊潤な香りのアールス系と茨城県での生育に適したアンデス系を親に持つ。2010年に品種登録された。19年度は鉾田市を中心に102人の生産者が約32ヘクタールを栽培する。

同センター園芸研究所の野菜研究室主任、加藤敏亮さんは、イバラキングを栽培するハウスの自動換気の数値化を研究。品質の良いメロンを作るにはハウス内の温度・湿度管理が欠かせない。「農家は単純な温度管理だけでなく、風向きや湿度も考慮して肌感覚でハウスを開け閉めする。まさに匠(たくみ)の技」と話し、「数値化して換気を自動化できれば負担が減らせる」と栽培試験に取り組む。

「早く出荷するメロンであればあるほど、換気は重要。天気と上手に付き合わないといけない」と話すのはJAほこたメロン部会の藤田達也さん。肥大性と秀品率の高さから、昨年からイバラキングに絞って栽培する。24歳で就農して17年。「マニュアル通りにはいかない」と失敗を糧に栽培技術を磨いてきた。収穫は交配後60日が目安だが、果肉のやわらかさや糖度などを見極め、タイミングを計る。「6月上旬がピーク」という。

収穫間近のイバラキングの様子を見る藤田達也さん=鉾田市上冨田

■全国一

茨城県のメロン作付面積は18年度1310ヘクタール、出荷量37600トンで全国一。出荷量は全国の約27%を占める。総務省家計調査によれば、1世帯当たりのメロン支出金額も都道府県所在地と政令指定都市で水戸市が3976円で1位だった(17~19年の平均)。

県は5、6月、旬の県産メロンをPRする。県産メロンの見栄えがする写真を撮影し、「#ハッピーいばらきメロン」を付けてインスタグラムかツイッターに投稿する「フォト投稿キャンペーン」では、6月30日までに応募すると、抽選で100人に県産メロンをプレゼント。「いばらきメロンおもてなしフェア2020」は、県内の飲食店や菓子店など76店舗で県産メロンを使った料理や菓子などを提供。アンケートに答え、同月30日までに応募すると、抽選で20人に県産アールスメロンがプレゼントされる。