《食いこ》地産地消のしょうゆ造り 桜川・鈴木醸造

茨城新聞
2020年5月18日

 伝統的な建造物が残る桜川市真壁町地区。立派な長屋門が目を引く鈴木醸造は1924(大正13)年、しょうゆとみその醸造元として創業した。現在は、しょうゆ造りに力を入れる。社長の鈴木正徳さん(55)は「この辺りは筑波山の恩恵を受けた水と、大豆、小麦の栽培が盛んで、しょうゆやみそ造りに適した土地」と話す。
 
 同社のしょうゆ造りは、蒸した大豆と炒(い)り砕いた小麦にこうじ菌を混ぜて3日かけてこうじを造る。それに塩水を加え、伝統的な製法の木おけで最低でも約1年寝かせるという。大豆とともにしょうゆの原料に欠かせない小麦は、発酵を促し、香りや甘さのもとになる。鈴木さんは、同市産の小麦と大豆を使い、地産地消を意識したしょうゆ造りに取り組む。「創業の頃は外国産の原料などなかった。地元の資源を生かそうと、原点に戻った」
 
 地元の名前を付けたしょうゆ「真壁」は、共に同市産の大豆と小麦「ユメシホウ」を原料に、2年熟成させて造る。「ユメシホウは、従来使っていた小麦よりグルテンが多く、うま味が豊か。味に深みを出すため、長く熟成させている」という。「さとのそら」という別の同市産小麦を使ったしょうゆも造っている。

地元産小麦を使ったしょうゆ


 
 鈴木家は、戦国時代から真壁地区で代々農業を営んでいた旧家。長屋門の扉を開けると、時代劇の武家屋敷に出てくるような玄関を持つ主屋が見える。白いしっくい塗りの長屋門は明治時代、主屋は江戸時代幕末期の1854(嘉永7)年に造られており、2000年に国の登録有形文化財に指定された。
 
 主屋の一角は事務所として使われている。事務所前に掛かる大きな幕に、青地に白く「木上(きあげ)」の文字が鮮やかだ。木上は代々使われてきた商標。鈴木の「木」と上物の「上」を組み合わせた。加熱していない新鮮なしょうゆ「きあげ」とも掛けている。
 
 2011年3月の東日本大震災では、主屋の瓦が落ちるなど被害を受け、復興に苦労した。「瓦の手入れは毎年行っている」と家業とともに伝統的な建造物も大切に守り続ける。
 
 「新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、購入は電話で問い合わせてほしい」と鈴木さん。市内の酒店や農産物直売所、筑西市の道の駅で取り扱う。
 
 ■メモ
 鈴木醸造
 ▽住所は桜川市真壁町古城191
 ▽(電)0296(55)1161

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