「かしてつ」公開願う 鉾田駅保存会・岡野さん、定期見回り車両整備

茨城新聞
2020年5月13日

 新型コロナウイルス感染拡大を受け、鉾田市の市民団体「鉾田駅保存会」は、車両公開イベントを中止している。同保存会は、「かしてつ」の愛称で親しまれ、2007年に廃線となった鹿島鉄道の車両を買い取り、動態保存に努めている。コロナ禍の中、大掛かりな補修作業も自粛中だが、理事の岡野利通さん(55)は「コツコツとできることをするしかない」と、1人で車両を管理しながら活動再開を待ち望んでいる。
 
 展示場所は同市当間の温浴施設「ほっとパーク鉾田」敷地の一角。展示場脇には芝生広場があり、外出自粛の息抜きに訪れる親子連れの姿が見られる。岡野さんは「早く事態が終息し、公開したい」と願う。
 
 同保存会では、3月下旬の「廃線13周年特別車両公開」を皮切りに、月に1回の定期イベントを予定していた。昨年11月から休日を利用し、車体の補修や塗装を行い準備を進めていたが、同ウイルスの感染拡大を受け、中止とした。
 
 イベントはなくなったが、岡野さんは「何もしないと車両が朽ちてしまう」と、感染予防に配慮しながら会員数人と補修を継続。4月16日の緊急事態宣言発令以降は、展示場の近くに住む岡野さんが定期的に見回り、最小限の作業を行い車両を管理している。
 
 車両の保存活動は、岡野さんを含む3人の鉄道ファンが自費で2両を買い取り、08年から同駅跡地(同市鉾田)で始めた。09年、地権者の意向で跡地が使えなくなり、市に車両を寄付。車両は同施設の敷地内に移設され、市から委託される形で同保存会が管理を続けている。
 
 管理している車両は、廃線時、現役車両としては国内最古で、戦前に製作された気動車「キハ601」(1936年製造)と、同鉄道最新車両だった「KR-505」(92年製造)。保存にかかる費用は、イベント時に販売するグッズ販売の収益以外は、会員らがほぼ自費で賄っている。
 
 苦労を重ねながらも保存に手を尽くしているのは、車両に強い愛着を感じているから。岡野さんは「物心ついた時から乗っていた車両。みんなの記憶に残したい」と、同鉄道を同市の歴史の一つとして次世代に継承していくつもりだ。
 
 修理、保全のための資金確保や会員の高齢化など、課題は少なくない。車両も東日本大震災で動力部が損傷し、現在は動かすことができない。それでも、コロナ禍が収まった後には県内各地に出向いてのPR活動を計画するなど、前向きに活動再開を待ち望む。岡野さんは「今は会員一人一人ができることをするだけ。いろいろ考えながら、活動を続けていきたい」と意欲的に語った。

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