那珂・常福寺で発見 光圀寄贈の極小仏 高さ1.5センチ、鎌倉時代最小か

茨城新聞
2019年5月16日

 水戸徳川家の菩提寺(ぼだいじ)である常福寺(那珂市瓜連)は15日、徳川光圀が同寺に寄贈し鎌倉時代最小となる仏像の可能性がある高さ約1・5センチの阿弥陀三尊像(あみださんぞんぞう)と、浅草寺(東京)の柱で作った慶派の仏師「定快」による観音像が見つかったと発表した。いずれも鎌倉時代に作られ、三尊像は当時の制作技術の高さを示しており、調査に当たった神奈川県立金沢文庫(横浜市)は「大変珍しく、歴史的に極めて重要」としている。

三尊像は中央の中尊阿弥陀如来像が約1・5センチ、両脇侍像が約8ミリと極小サイズ。光圀が作らせた厨子(ずし)(高さ約25センチ)に置かれている。光圀自身が所蔵していたが、同寺に寄贈した経緯がある。光圀自筆の文章も付属する。運慶や快慶の慶派が確立した様式を踏襲し、鎌倉時代中期から後期の作品とみられる。

一方、観音像「聖観音菩薩立像(しょうかんのんぼさつりゅうぞう)」(同約50センチ)は東日本大震災を受け、那珂市内にある末寺から常福寺に移された。観音像内にあった墨書を解読したところ、1297(永仁5)年に僧侶が快慶の流れをくむ定快に作らせたことが判明。同文庫によると、江戸時代以前の浅草寺の資料は貴重という。浅草寺本堂の柱を転用しており、秘仏の浅草寺本尊を模したとされ、本尊観音の身代わりにしたと推測される。

常福寺は1338(延元3)年の開山。同文庫は今月17日~7月15日に開く展覧会「浄土宗七祖聖冏(しょうげい)と関東浄土教-常福寺の名宝を中心に」で仏像を初公開する。展示に向けて約1年間、所蔵する文化財など約100点を調査する中で2体の仏像が発見されたといい、同文庫の担当者は「徳川家の菩提寺として由緒正しさを証明するもの。文化財的価値がある」と分析した。

那珂市歴史民俗資料館(同市戸崎)の仲田昭一館長は「鎌倉時代の仏像が2体も発見されることは異例。観音像から見つかった墨書の由来が解明されたのは貴重だ」と指摘した。

仏像は市内でも公開予定。10月24~31日に常福寺で公開し、同6日には専門家によるシンポジウムも予定している。小笠原聖華副住職は「地元の人が大事に保存し、(現在まで)残った仏像。貴重な宝なので、ぜひ見てほしい」と話している。

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