《味な探検隊》高崎・パスタ店巡り 自慢の味より取り

上毛新聞
2018年10月1日

県内外に「パスタのまち」の魅力を発信する高崎市。市内には多種多様な店がひしめき、それぞれ自慢のパスタを提供する。言わずと知れた老舗から隠れた名店まで、おいしそうな匂いに誘われて食べ歩いた。

◎高高生の通過儀礼 カフェ・ド・プランタン(高崎市片岡町)
高崎高のすぐそばに店を構える。同校生徒が愛してやまない激辛パスタがあると聞き、食べきれるか心配になりながら店に入った。


木目調の店内は落ち着いた雰囲気で、女性たちの会話が聞こえてくる。ランチ、ティータイム、ディナーでそれぞれ通常メニューの他、お薦め料理を提供している。
高崎市場で働いていた、代表の高橋敏夫さん(69)が1981年6月、永年の夢だった店を自宅裏に開いた。地元で愛され、高崎市が昨年9月に開設したグルメ情報サイト「絶メシリスト」に載ると、県外の客も増加。現在は長男の秀允さん(35)も厨房(ちゅうぼう)に立ち、味を引き継いでいる。
約20種類のパスタの中で、ひときわ目を引くのが1~5の5段階の辛さを設定した「辛いパスタ」。一風変わったものを取り入れようと、敏男さんが創業当時に考案した。聞きつけて食べに来た高高生の要望で誕生したのが、さらに辛さを極めた「高高スペシャル」(855円)だ。妻の代志江さん(61)は「文化祭直前になると、先輩に連れられて新入生が挑戦する。登竜門らしい」とほほ笑む。


スペシャルは、塩味をベースに粉末のトウガラシやトウバンジャン、タカノツメを大量に使用。ベーコンとタマネギのシンプルな具材で、見た目はトマトパスタのようだ。甘い考えを持ちながら口に運ぶと、辛みが一気に刺激し、汗が噴き出した。食べ進めると手が震え、途中でギブアップ。再挑戦を決意し、店を後にした。
午前11時~午後10時。火曜、第3水曜定休。問い合わせは同店(☎027・323・3410)へ。

①県産食材で旬の味 トラットリアシュン(高崎市井野町)
東京都内で修業した店主の内田俊さん(42)が、地元に戻り開店した。県産食材を味わってもらおうと、地産地消に力を入れる。メニューを季節ごとに変え、旬の食材を扱う。


秋の目玉は「高崎産利平栗のニョッキ 利平栗のクリームソース 猪豚の自家製パンチェッタ入り」(税別1580円)。ほんのり甘いニョッキと、塩味のパンチェッタがよく合う。前橋産ナスや沼田の栗カボチャ、板倉の川エビなどを生かしたパスタも提供する。
店長で妻の美和さん(37)は「敷居は高くないので、気軽に来店してほしい」と話している。
日、月曜定休、問い合わせは同店(☎027・364・5735)へ。

②手ごろ価格の生麺 UNOイタリアーノ(高崎市下中居町)
1年前に開業した、高崎市内では珍しい生パスタ専門店。手ごろな値段で味わってもらいたいと、700~800円台で提供する。代表の高橋富博さん(57)は「質を追求し続け、一人でも多くの人に感動を与えたい」と意気込む。


平たいタリアテッレ麺を使った「UNO風 和牛と和風わさびソースパスタ」(1550円)が人気という。高品質なA5ランクの赤城牛ステーキを上にのせ、ワサビとニンニクが効いている。その日の仕入れによって考える肉、魚料理も注目の一品だ。
生演奏を聴きながらコース料理を楽しめる食事会を定期的に開く。水曜定休。問い合わせは同店(☎027・386・8305)へ。

③噴火をイメージ シャンゴ問屋町本店(高崎市問屋町)
シャンゴ(関崎晴五社長)は1972年創業の老舗で、県内に8店舗を展開する。


トマトベースの「ベスビオ」(Sは税別710円)は同社発祥とされ、県民に長年親しまれる。ムール貝を立てるように盛り付け、火山噴火をイメージ。ソースは工場生産だが、調理人が最後に手を加え、店ごとに味付けが少し変わる。
定休日は各店で異なる。問い合わせは本部(☎027・362・7938)へ。

④粒々の食感特徴 room′s(高崎市鞘町)
開店当初は洋菓子店だったが、来店者の要望を受けてパスタも提供するようになった。


一押しはクリーミーな味わいと粒々した食感が特徴の「明太子とイカのパスタ」(900円)。果物が盛りだくさんの「フルーツフレンチトースト」(880円)もファン多数。オーナーの岡田哲浩さん(63)の優しい人柄も人気だ。
無休。問い合わせは同店(☎027・324・7272)へ。

【こんな麺も…】
吉田製麺(高崎市江木町、info@japastalia.com) 高崎産小麦を使った市内初の生パスタブランド「ジャパスタリア」を展開。一般的なスパゲティ、楕円(だえん)形のリングイネ、平打ちのタリアテッレの3種類を生産している。穴から生地を出す「押し出し式」を採用し、コシを生み出した。現在は25の飲食店と取引するほか、前橋、高崎両市の農産物販売所など5店舗で販売。吉田幸二代表(39)は「どこでも食べられるようなパスタ麺を目指す」と話す。

【本日の探検隊員】高崎支社 報道部 斎藤大希記者 作り手の思い実感
猛暑による夏バテを引きずり、「食べきれるだろうか」と心配になりながら取材を進めた。だが、こだわりの生パスタ麺や旬の具材、ソースを味わっていると、いつの間にか平らげていることがしばしばだった。何より、ゆでたての麺よりも熱い、作り手の思いを感じた。食欲の秋本番を前に、気付けば胃袋の準備が整っていた。

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