古民家「酒井家住宅」カフェに 中田宿の歴史伝える

茨城新聞
2018年7月17日

築100年以上の「酒井家住宅」を改修した古民家カフェが、古河市中田の旧日光街道沿いにオープンした。利根川沿いの宿場町「中田宿」の面影を残す貴重な建物で、インテリアには歴史が感じられる旅籠(はたご)やしょうゆ蔵、酒店などの看板や当時の家具、生活用品などを取り入れた。オーナーは「先祖が大切に使ってきた建物や道具を生かしたい」と初のカフェ経営を決意。「多くの人が気軽に訪れ、交流できるカフェにして地域を盛り上げたい」と意欲を示す。

埼玉県加須市、酒井陽子さん(57)が経営する「サカカンカフェ」は、酵素玄米やしょうゆこうじなど、自家製の発酵食品を使ったランチやスイーツが特徴。特製ブレンドのコーヒーやさしま茶の和紅茶など、飲み物にもこだわった。

酒井家は1831(天保元)年ごろから中田宿で旅籠や質屋などを経営。明治、大正から昭和、平成にかけ、郵便局やしょうゆ蔵、肥料店、酒店などを営んだ。カフェの店名は、これまで地域に親しまれた店の愛称「サカカン」から名付けた。

古民家は2階建て(床面積約170平方メートル)。1912年の治水工事で中田宿が現在の中田地区へ集落移転した際、利根川沿いからそのまま移築された記録が残る。古い建築物の調査を30年以上行い、今回の改修を手掛けた加藤誠洋1級建築士(53)も「元の中田宿の様子を示す、かなり貴重な建物」と話す。

酒井さんは当初、2年前から空き家だった古民家を取り壊すつもりだった。だが家の中を整理すると、歴代の店の看板や木製の貯金箱、酒のラベルなどが次々と出てきた。「捨てられない。先祖が代々大切にしてきた物を生かしたい」。その思いが、酒井さんをカフェ経営への挑戦へ向かわせた。

看板やたんすの戸などは、店のカウンターやテーブルに再利用。法被や大正時代のオルガンなどは店内に飾った。旅籠で使われた膳やわんはそのまま食膳として使い、酒井家や中田のまちの歴史が感じられる雰囲気に仕上げた。

酒井さんは「中田宿は江戸時代、利根川の対岸を結ぶ渡し場としてにぎわったまち。カフェを地域の人が集まり、外から訪れた人と交流できる場にして、まちの活性化に貢献したい」と期待を膨らませた。

営業時間は午前11時半~午後5時(ラストオーダー同4時半)。日・木曜定休。(電)0280(23)2682。 

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